2月1日の衆議院予算員会で、平議員が岸田総理にweb3に関して質問をしました。
https://mirror.xyz/caicaikiki.eth/U8r4gMGSu3If7r4GlURVZSCZIutamoblZ15mr5Km8Yg2023年2月1日衆議院予算委員会にて、自民党Web3PT座長の平将明議員が、Web3に関して政府へ質問し総理が答弁された内容を書き起こしました。
この中でも、メタバースやNFTについても言及されていて、こんな国会の中で扱われるようになったのだと思うと、日本政府の急速な動きに期待したいところです。
さて、このNFTの連載も今回が最終回。今回は、NFTとメタバースが組み合わさることによって、何が変化していくのか、そんなことを考えてみたいと思います。とはいえ、NFTとメタバースの組み合わせは、まだまだ始まったばかりで、技術的な課題も多く抱えています。それをどのように解決していくのかは、エンジニアの腕の見せ所でもあります。
また、多くの人が、メタバースがweb3の一部だと勘違いしていることもあるので、そもそもメタバースがどういうものなのか、なぜNFTと組み合わさることが重要なのかをしっかり押さえていただきたいと思います。
目次
技術的に定義されていないメタバース
メタバースという言葉は、アメリカのSF作家・ニール・スティーヴンスンが1992年に発表したSF小説「スノウ・クラッシュ」に出てきます。つまり、技術用語ではなく小説の中に出てきた造語なのです。
そのため、メタバースには明確な定義はなく、なんとなくコンピュータが作った仮想の世界で、ユーザがアバターという自分の分身を操ってコミュニケーションするというのが、多くの人が抱くイメージになっています。しかし、広義にとらえると、SNSのようにコンピュータを介してコミュニケーションするのはメタバースの1種と言っている人もいますし、もっと狭義でヘッド・マウント・ディスプレイを装着して、身体の動きもトレースしてアバターが同じ動きをするような3D仮想空間だけがメタバースだと説明する人もいます。
メタバースという話をするときに、どういうサービス内容をイメージして話しているのか注意深く確認しておかないと、途中から話が通じなくなることもあります。とくに、エンジニアなら、どんなメタバースが求められているのかを理解しておかないと、設計してから大幅な仕様変更に追われることになりますよ。
デバイスの進化によって没入感が高くなる
メタバースのサービスは多種多様にあるのですが、実際に使ってみるとデバイスによって没入感が大きく違うことが分かります。いくら高精細な大型ディスプレイで体験してみても、ヘッド・マウント・ディスプレイ(HDM)には勝てません。上下左右に顔を動かしたときに、その動きに連動して風景が変化するHDMの方が、より没入感は高まります。
また、視覚の情報が多い、つまり、高精細で動画のフレームレートの高い方が没入感も高くなると考えてしまいますが、音のクオリティによって没入感に差が大きくなることを忘れてはいけません。ステレオであることはもちろんですが、左右の音の違いで方向や距離を感じるので、見た目だけでなく人の話し声や足音、鳥の声、風の音などで大きな差がでます。
こういうトータルでバランスがとれていることが大事になってくるのですが、これらを追求すればするほどデバイスの処理能力が求められ、ますますバッテリーが大きくなってしまいます。それを解決して軽量になっても、送受信するデータ量が増えていくのでネットワーク回線の問題も出てきます。日々、デバイスの改良は行われているのですが、1つクリアすれば、別の課題が出てくるような状態になっています。ただ、間違いなく、新しいデバイスが出てくるたびに、没入感は高くなっていき、だんだん仮想と現実の区別がむずかしくなっていくでしょう。
現実に近づけるのか、空想に近づけるのか
メタバースを設計するときに考えなければならない重要なポイントの一つに、メタバースを現実に近づけるのか、空想に近づけるのかというバランスの問題があります。現実世界をそっくり再現するというメタバースは、ミラー・ワールドとかデジタル・ツインとか呼ばれるもので、例えば渋谷の街をそっくりそのまま再現して、道路工事やビル建築のシミュレーションを行うといったことがあります。あるいは、メタバース内で自動運転のプログラムをテストして、信号機や道路標識を正しく識別できるかどうか確認するといった利用も可能です。産業用途で急速に利用が進んでいる分野で、世界トップクラスのGPU企業NVIDIAは、クラウドで利用できるデジタル・ツインを提供しています。
逆に、空想の世界を創るメタバースとしては、ユーザが妖精や動物のアバターになって、独自の世界観の中でコミュニケーションするというものがあります。オンラインゲームでは「あつまれ どうぶつの森」のようなメタバースで、独自のルールや、異世界に迷い込んだことでの謎解きをするといったものになります。
昨今広がってきている多くのメタバースは、これらの中間に位置することになり、現実と仮想とのバランスをどのあたりに設定しているのか考えてみると面白いです。地方創生のメタバースということで、地方の風光明媚な場所を見事に再現しながら、ゆるキャラのアバターが道案内したり、地方の神社仏閣で、ゆるキャラが飛んだり跳ねたりするのは、なんかアンバランスな感じを受けます。コンセプトとして、ゆるキャラが出てくるのが正しいのかといったことを考え抜かないと、違和感が出てきてしまってユーザが離れていくことになりかねません。メタバースはプログラムを創れば何でもできるからこそ、『何をしないか』を決めておかないと、バラバラで世界観が崩れてしまいます。
メタバース1.0から3.0までの変遷
WEBが1.0から3.0へと移り変わってきたように、メタバースも1.0から3.0へと変遷しています。日本でのメタバース研究第一人者であるデジタルハリウッド大学院の三淵啓自教授に教えていただいた内容を紹介しましょう。
まず、メタバース1.0ですが、これは3D空間を表現したゲームが最初です。それまでのファミコンなどのゲームは2Dでの表現だったのが、CPUの進歩やメモリなどが安くなってきたことで、奥行きをもたせた表現が可能になりました。ただ、この時点ではネットワーク接続はなかったので、3D空間を一人で遊ぶだけでした。
次に、インターネットで接続されオンラインゲームが主流になってくると、複数のユーザが同じ3D空間にログインして、アバターを介してコミュニケーションするようになりました。WEB2.0のSNSのように、ユーザ間で情報のやり取りや、アイテムの受け渡しができるようになってきたのです。
そして、これから広がってくるメタバース3.0になると、情報やアイテムのやりとりに加えて、「価値」の交換が可能になってきます。具体的には、メタバース内でポイントやトークンが利用できるようになって、経済活動が行えるようになってきたのです。この経済活動ができるというところが注目され、さらに、NFTやトークンを応用することで、企業も個人も興味を持つようになってきています。
このメタバース1.0から3.0への変化については、noteにまとめていますので、興味のある方は、ご覧になってください。
https://note.com/adachiakiho/n/n4396a9eada2aなぜメタバースにNFTが必要になるのか?
15年ほど前の2007年前後に仮想空間「セカンドライフ」がブームになりました。当時、セカンドライフ内で利用できるリンデン・ドルと言われる電子ポイントはドルに換金できるということもあって、仮想世界でもビジネスができると話題になりました。事実、セカンドライフ内の仮想の土地を売買して「不動産業」で大きな財を成し、アメリカのビジネス雑誌BusinessWeekの表紙にセカンドライフのアバターが掲載されるユーザまで登場しました。
気が付いたと思いますが、ブロックチェーンやNFTなど登場していない時代にメタバースでの経済活動は行うことができました。ただ、そこでの問題点は、WEB2.0と同じですべての情報は運営会社に握られています。運営ルールが突然変わることもありますし、アカウントを凍結されることもあります。運営会社の指先一つで、せっかく作ったアイテムだとしても、削除されることもありえます。
今後、メタバースが乱立し、1つのメタバース内だけの活動では収まらず、メタバースの外のマーケットプレイスでのアイテム売買や、メタバース間でのアイテムをやりとりしたいといった需要がでてきます。そういったときには、運営会社ではなくブロックチェーンに基づいてメタバース内のアイテムとNFTを結びつけることで、メタバースの外でも第三者が安心して売買に参加できます。
メタバースの基本的な話から、複数のメタバースの話まで一足飛びに説明してきましたが、もう少し詳しく知りたい方は、下記の記事を参考にしてください。
株式市場で、関連する株の取引が活発になるなど注目を集めているメタバース。最近では、Facebook社がメタ社と改名し、メタバースに注力すると宣言したことも話題となりました。 技術自体は必ずしも新しくはありませんが、昨今ではメタバースを使った新しいサービスが数多く登場している状況です。この記事ではメタバースとは何かやメリット、活用例についてわかりやすく解説しています。 メタバースとは【3次元の仮想空…
メタバース間で「輸出・輸入」が起きる未来
これからメタバースのサービスは、多くの企業が取り組むようになり、その種類も増えていきます。そうなっていくと、1つのアイデンティティーを持ったアバターを、どのメタバースにログインしても使いたいという欲求が高まってきます。SNSが増えてきたときに、複数のサービスでプロフィール写真もユーザ名も同じにしているように、どのメタバースにログインしても、「〇〇さんだ!」とすぐに認識してもらうために同じアバターでログインしたくなるはず。
さらに、アバターが身に付ける服や靴、帽子などのアイテムも共通にしたくなるでしょうし、それ以外の乗り物や家といったアイテムもあるメタバースから別のメタバースへ輸出入するようなことをやりたくなってきます。
また、WEB2.0のような何千万人、何億人のユーザを集めるというよりも、個々のメタバースの世界観の好みに合う人だけの規模になってきます。まさに、ここでも、分散化が起きてきてweb3のように小さなコミュニティに応じたメタバースがあちこちにできてくるでしょう。そこでは、ブロックチェーンをベースにして、自分のアドレスを一つ持っていれば、さまざまなメタバースにログインして、同じアバターを使えるようになっていくと思われます。
ただし、そこには、ブロックチェーンとどのようにIDやアイテムを結び付けていくのか、どのようなスマートコントラクトで制御するのか、表示データなどをどのようなフォーマットで共通化するのかなど、課題は山積です。アイデアとしては、いろいろと出てきているのですが、いざ実装するとなると技術課題が次々と出てきます。
だからこそ、ブロックチェーンを基礎とした技術、それに関連するNFTやスマートコントラクト、メタバースの技術などを理解し、使いこなせるエンジニアが求められるのです。
そして、この連載を通じてお伝えしてきたような技術をどのように使って、ユーザがやりたいことを理解し便利にしていくのかは、エンジニアの腕の見せ所。日々、新しい技術が出てきますが、ワクワクしながら新たな世界を創り出していく喜びを見つけていってください。
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