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NFTとは?「NFTを支えるブロックチェーン」

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2021年の春ごろから急激に注目されるようになったNFT。2021年3月には、老舗オークションのクリスティーズで、NFTアート「Everydays – The First 5000 Days」が当時のレートで75億円というとんでもない金額で落札されたこともあって、一夜にして世界中にNFTが知られることになりました。このニュースの影響が大きくて、まだまだ多くの人がデジタルアート以外には関係ないと思っています。しかし、その技術はブロックチェーンに基づいたもので、広くさまざまな分野に応用可能です。エンジニアの方々も、技術に興味を持ってはいるものの、一般の人にどのように説明したらいいのか、また、どのように社会の中で使われていくのかを説明するのに苦労しているのではないでしょうか。

BeepleのNFT作品が約75億円で落札。現存アーティストのオークション記録第3位に:
https://bijutsutecho.com/magazine/news/market/23726

今回から4回にわたって、NFTがどういうものか、どんな応用があるのかといったことを解説していきます。技術的な話というよりも、エンジニアが一般の人に対して、どのように説明すればいいのかというポイントを重点的に解説します。この記事の内容をお客様への説明に活かしていただければ幸いです。

また、ブロックチェーンの技術的な内容については、ぜひ、下記の記事を参考にしてください。そして、私の例え話と何が違うのか、どこかどのように例えになっているのか、比較してみてください。

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NFTについて質問されて戸惑うエンジニア

だれにでもわかるNFTの解説書」を上梓させていただいてから、多くの方が手にしていただいたこともあり、4刷りになりました。お陰様で、さまざまな企業から講演依頼を受けるのですが、面白いことにIT企業からの社内研修の依頼もあります。

IT企業であれば、ブロックチェーンやNFTについて理解しているエンジニアもいるでしょうし、少なくとも興味を持っているでしょう。であれば、わざわざ私が出ていかなくても社内研修などできそうな気がします。

しかし、よくよく話を聞いてみると、「営業に行くと、お客様から質問されて説明するのが大変なのですよね・・・」とか、「新聞の記事を見せられて、NFTって今までと何が違うのかと聞かれて困っています」といったことを言われました。

確かに、ネットで検索すればブロックチェーンやNFTについて説明した記事も多くありますし、書店に行けば専門書が並んでいる状態です。ただ、これらは、専門用語ありきで説明されていて、「NFTとは、Non-Fungible Tokenの略で、非代替性トークンです」といったところから始まります。一般の方々は、そもそもトークンが分かりません。営業先で、「そのトークンって何ですか?」と質問されると、答えに困ってしまいます。「仮想通貨みたいなものですよ」と答えたところで、仮想通貨も使ったことがない人にとっては、謎が深まるばかりになります。

私が説明する場合は、NFTとは「デジタルの証明書」と最初に伝え、「証明書なので、何かを証明しているのですが、何を証明しているのでしょうか?」という前置きからはじめています。そして、リアルのアート作品と、NFTのアート作品とを比較してNFTの働きを説明しています。油絵や彫刻のようなリアルのアート作品の場合には、それが本物であるという証拠として鑑定書がついており、鑑定書とセットでその作品が本物であると誰もが分かるようになり、安心材料です。これと同じように、デジタルのアート作品も、そのデジタルデータに「このデータがアーティストの認めたオリジナル」というNFTという証明書とセットにすることで、誰もがオリジナルであると分かるようになったと説明しています。

NFTはブロックチェーンとどう関係しているのか?

鑑定書とNFTが同じような働きをするというのは、一般の人たちには分かりやすい例えになっているのではないかと思います。ただ、デジタルのことを少し知っている人からすると、デジタルデータのコピーが簡単にできるので、NFTはコピーを防ぐことができる技術と勘違いしてしまいます。さすがに最近は少なくなりましたが、「NFTによって作品の権利を守り、コピー防止につながる」といった荒っぽい説明をしているニュースもあったので、それをそのまま受け取って、NFTはコピープロテクションだと思っている人も少なくありません。未だに、「ネット配信しているコンテンツがコピーされると困るので、NFTで防ぎたい」といった相談は、多いのです。

リアルのアート作品の場合でも、贋作と言われる偽物の絵画に、偽造した鑑定書がセットになってしまうと、素人には区別できなくなります。これと同じように、いや、それ以上にデジタルの世界では、デジタルデータをコピーするのは簡単であり、しかも、コピーされたデータは、元のデータと全く区別できないので、デジタルアートとNFTと両方がコピーされるとNFTの意味がなくなるのではないかという鋭い質問を投げかけられたこともありました。

NFTが、トークンという何か独立したデータがあるように印象を与えているのですが、あくまでもブロックチェーンというデジタル台帳(これについては後述します)の記載方式にすぎません。いわば、「口座Aから口座Bへ、デジタルアート代金として1イーサ支払われた」と記録されているだけです。つまり、NFTはブロックチェーンの一部であって、独立して存在しているものではありません。この関係を分かっていないと、NFTをいきなり調べても、簿記が分かっていないのに経費になるのかどうかとか調べても混乱するのと同じになるので、まずはブロックチェーンの特徴を理解しておきましょう。

次章では、一般の方へ説明するときに、必ず伝えてほしいブロックチェーンの2つの基本機能を説明します。

ブロックチェーンの基本機能

分散管理台帳による履歴管理

まず、大事な機能というか、ブロックチェーンそのものと言えるのが履歴管理です。

ブロックチェーンは、ビットコインから始まったので取引履歴を管理するようになっています。つまり、「ビットコインの口座Aから口座Bへ、1ビットコイン送金した」という取引履歴が記録され管理されています。データベースと同じように考えてもらってもいいですが、一般の人に説明するのにデータベースと同じと言ったところで、何のことか分かりません。もっと分かりやすくすれば、台帳と同じなので、台帳をデジタル化したデジタル台帳の機能を持っているのがブロックチェーンと説明しています。エクセルも取引履歴を記録する台帳として使われるので、ネット上に存在するエクセルで作った台帳と例えてもいいでしょう。

ブロックチェーンがデータベースと大きく違うのは分散管理台帳になっていること

データベースやエクセルの管理台帳は中央集権型台帳となっていて、原本が1つだけで管理されています。紙の台帳でも同じで1冊しか原本がありません。そのために、改ざんされないように原本を厳重に管理しています。アクセス権限の設定や、不正アクセスの防止、万が一のためのバックアップシステムなど、保全のための費用が高くなり、それらのコストが、サービス利用料に上乗せされていきます。

一方のブロックチェーンは、ノードと呼ばれるブロックチェーンのネットワークに参加しているコンピュータのすべてに台帳がコピーされて保存されています。そして、ネットワークによって更新データのやりとりができるので、常に最新版が個々のノードに保存されています。コンピュータとネットワークが広がって、しかも低コストで利用できるからこそ実現できるようになった仕組みです。何十、何百、何千というコンピュータにデータが保存されているので、悪意を持った誰かが数か所のデータを改ざんしたとしても、それ以外の何百というデータと違うので修正されてしまいます。広がれば広がるほど、改ざんがむずかしくなり安全性が高まる仕組みになっているのです。さらに、悪意による改ざんだけでなく、コンピュータの故障やネットワーク回線のトラブルで間違ったデータが記録されたとしても、正しいデータに修正されるので堅牢性が高い仕組みで金融業界も注目している点です。実は、この分散化システムによるデータ改ざんや二重送金などの問題は「ビザンチン将軍問題」と言われるもので、その一つの解決策としてブロックチェーンが注目されています。ビザンチン将軍問題に興味のある方は、下記を参考にしてみてください。

「ビザンチン将軍問題」とは何か:https://www.nii.ac.jp/today/69/4.html

このようにブロックチェーンは不正や改ざんがほぼ不可能で、これまでの中集権型台帳よりも簡単な仕組みで「ビザンチン将軍問題」を解決する素晴らしい技術です。しかし、どんなものでも、メリットとデメリットがあり、ブロックチェーンにもデメリットはあります。この点もエンジニアとして冷静に判断する材料として知っておきましょう。

まず、リソースを多く必要とする問題があります。ノードとして参加するコンピュータが増えれば増えるほど堅牢なシステムになっていくのですが、台帳のデータが大量にコピーされていきます。そためにネットワークのトラフィックや消費電力もどんどん増えていくことになり、本当にそこまで必要なのかというのも難しい課題になります。この辺は、SDGsなどに敏感な人たちから批判されるポイントですね。リソースの問題に関しては、技術的に解決するアイデアがいろいろと出されてきていて、先日もイーサリアムがマイニング方式を変更したことで、電力諸費が9割以上削減できると見込まれています。

イーサリアムのエネルギー消費:https://ethereum.org/ja/energy-consumption/

次に、ブロックチェーンならではのデメリットでもあるのですが、一度でも記録されたデータを取り消すことは実質できないということがあります。メリットのまさに逆の話で、間違った情報を記録してしまうと消すことは、まずできません。バーン(Burn)と呼ばれるNFTやトークンを使えないようにするという方法はありますが、誰も使えないだけであって、ブロックチェーン上からデータを消すことはできません。このことから問題になるのが、著作権を持っていない第三者が無断で作品をNFT化してしまった場合に、取り消すことができなくなるということです。事実、世界最大のNFTマーケットプレイスOpenSeaでは、無料発行の8割以上が不正な作品であるとも報道されています。

OpenSeaの無料発行機能でミントされたNFTの8割以上が不正か:https://coinpost.jp/?p=316427

スマートコントラクト

イーサリアム以降、重要になってきたのがスマートコントラクトです。コントラクトは契約のことなので、「賢い契約」という意味になり、プログラムで契約が自動的に処理されていく機能です。

例えば、あるNFTを10イーサ(ETH)で購入する場合に、毎月1イーサの10回分割で支払うとします。購入者が毎月1イーサを支払い続けて、10回の支払いが完了すれば問題ありません。しかし、5回目で月末までに払うことができないとなると、販売者と購入者の間で揉めることになり、最悪の場合は裁判といったことになりかねません。これをスマートコントラクトのプログラムで実行すると、NFTもブロックチェーン上に存在しているので、途中で支払いが滞った場合には、NFTが販売者の元に自動的に戻されるようになります。

NFTの面白い機能として転売された場合でも転売価格の10%が元の作品を作ったアーティストにも分配されるという説明をされることがありますが、これもスマートコントラクトが動いているからこそできる仕組みになっています。所有者が移転するごとに、そのときに支払われた一部をアーティストの口座に自動送金されるようになっているのです。

これらは、ブロックチェーンという取引を管理できる台帳があるからこそできることであり、また、このスマートコントラクトのプログラム自体もブロックチェーン上に組み込まれるので、不正を働く(勝手に内容を書き換える。つまり、契約内容を一方的に有利な内容にしてしまう)ことができないようになっているのです。

さらに、だれもがプログラムの内容を確認できるので、バグやおかしな契約内容にはなりにくいとされています。極端な言い方をすれば、これまでのようには契約内容が履行されないときに、揉めたり、裁判になったりするのではなく、プログラムが契約内容に従って自動処理してしまうので、揉めることも裁判になることもありません

非常に合理的な仕組みであり、契約内容はプログラムになって自動実行されるので、「払った」、「払っていない」、「渡した」、「受け取ってない」といったトラブル、もっと極端なことをいえば、「言った」、「言わない」で揉めることはなくなります。

ただ、困ったことに、スマートコントラクトのプログラムの内容は誰もが見ることはできるのですが、プログラムのロジックと契約内容と合っているのかという、プログラマーのスキルと契約書を読み解く法務のスキルと両方持っている人材がほとんどいません。実際、ロジックの盲点を突いて、NFTを取られてしまうとか、支払った代金が戻ってこないといったことも起きています。しかも、スマートコントラクトの内容に合意したことになっているので、違法性はなく、泣き寝入りするしかなくなっています。

法務は専門ではないので詳しくは言及しませんが、そもそも、ブロックチェーンでの取引はデジタルデータの所有権をデジタルの仮想通貨で購入するという取引になってくるのですが、デジタルの所有権が定義されていない現行の法律では、何に対して何を支払ったのかが明確にならないのも課題です。

オンラインショップと何が違うのか?

参照元:REV WORLDS公式サイト

こういうスマートコントラクトが動作するブロックチェーンが広がってきて、NFTとトークンとのやりとりで取引が行われるようになると何が変化してくるのでしょうか。従来のオンラインショップと、NFTマーケットプレイス(NFTを売買できるマーケット)と比較してみると、その違いがはっきりしてきます。

まず、従来のオンラインショップでは、お客はお金を払って商品を購入します。そして、後日、購入した商品が届くようになっています。一方、NFTマーケットプレイスでは、お客はトークンで支払ってNFTを購入しますが、購入したデジタルアイテムそのものは手元に届くことはありません。あくまでも、NFTという証明書が手に入るだけになります。

ここでも、一般の人たちが勘違いしているのですが、NFTを購入すると、自分のスマホやパソコンに、デジタルアイテムが送られてくると思っています。LINEのスタンプや壁紙を購入するような感覚ですね。しかし、NFTは、あくまでも「証明書」であり、その証明書をもっていることで所有権を主張できるというのが、今までと大きな違いになります。

従来のオンラインショップで購入した場合は、「モノ」を持っている人と「所有権」を持っている人が同じです。ところが、NFTアートを例にすると、オリジナルのアートのデータは別の場所(例えば、NFTマーケットプレイスのサーバ)に置かれていて、「所有権」を持っている人は別の場所にいます。預かっている人と所有している人が別になるというのが、新しい考え方になっています。

この辺のパラダイムシフトは、さまざまな分野に起きていて、例えば、証券や債券などもデジタル化しトークンでの売買が始まろうとしています。

不動産セキュリティ・トークンの公募及び発行に関する協業について:
https://www.nomuraholdings.com/jp/news/nr/nsc/20220907/20220907.html

つまり、土地や建物などもブロックチェーン上での取引に切り替わろうとしているのです。この辺の話は、別の回で詳しく説明したいと思いますので、ご期待ください。

まとめ

今回は、NFTとブロックチェーンの関係、そして、基本になるブロックチェーンの概念について技術用語を使わずに説明してみました。

エンジニアが技術用語を使わずに一般の方々に説明するのに使える内容となっていますので、ぜひ活用してください。これから一気に世の中が変化しようとしていることを広めていただければと思います。

次回は、NFTについて考えてみましょう。

【全4回】足立明穂の連載記事

第1回:「NFTを支えるブロックチェーン」

第2回:12月公開予定

第3回:1月公開予定

第4回:2月公開予定

Podcast: 足立明穂の週刊ITトレンドX