
テレワークの普及やサイバー攻撃の巧妙化によって、従来の境界型防御だけでは情報資産を守りきれない時代になりました。エンドポイント側で脅威を未然に防ぐ仕組みとしてEPP(Endpoint Protection Platform)が注目を集めていますが、EDRとの違いや具体的な機能までは把握しきれていない担当者も多いのではないでしょうか。
この記事ではEPPの基本から市場動向、検知の仕組み、EDRとの違い、導入メリットや選定ポイントまで順に解説します。自社のエンドポイントセキュリティ強化を検討する際の参考にしてみてください。
エンドポイントセキュリティ Deep Instinct | KAGOYA
AIで未知の脅威とランサムウェアを先読み防御。企業を守る次世代エンドポイント防御ソリューションです。
目次
EPP(Endpoint Protection Platform)とは
EPP(Endpoint Protection Platform)とは、日本語で「エンドポイント保護プラットフォーム」と呼ばれるセキュリティソリューションの総称です。PCやスマートフォン、タブレット、サーバーといった、ネットワークの末端に位置する「エンドポイント」と呼ばれる端末を、マルウェアや不正アクセスなどのサイバー脅威から守ることを目的としています。
- 複数のセキュリティ機能を統合的に提供するプラットフォーム型のソリューションであること
- リアルタイムでの脅威検知と防御を行うこと
- 企業や組織における多数の端末を一元管理できること
従来から広く使われてきたアンチウイルスソフトも、実はEPPに含まれる製品類型の一つです。ただし実務上は、個人向けの製品を「アンチウイルスソフト」、企業向けの統合的なセキュリティ製品を「EPP」と呼び分けるケースが一般的となっています。EPPは企業のセキュリティ担当者が複数の端末を効率的に保護・管理するための、より包括的なソリューションとして位置づけられています。
EPPが守る対象「エンドポイント」とは何か
エンドポイントとは、企業や組織のネットワークに接続されるPC、サーバー、スマートフォン、タブレット、IoT機器など、人が直接操作するか否かにかかわらず”ネットワークの端点”となる機器全般を指します。
具体的には以下のような機器が該当します。
- デスクトップPC
- ノートPC
- スマートフォン
- タブレット
- サーバー
- プリンター
- IoT機器
これらのエンドポイントは、従業員が日常業務で使用する接点であると同時に、外部ネットワークとの接続点でもあります。そのため、サイバー攻撃者にとっては格好の侵入口となりやすい特性を持っています。特に近年は、テレワークの普及により社外から社内ネットワークへアクセスする機会が増え、エンドポイントの数も種類も多様化しています。
攻撃者は、セキュリティ対策が手薄になりがちな個々のエンドポイントを狙い、マルウェア感染やフィッシング攻撃を仕掛けることで、企業ネットワーク全体への侵入を試みます。このように、エンドポイントは企業のセキュリティにおいて最も脆弱性が高まりやすいポイントであり、重点的な保護が求められる対象なのです。
なお、EPPは多くの場合、Windows/macOS/LinuxやAndroid/iOSなどの汎用OS上にエージェントを導入して保護します。プリンターや多様なIoT機器はエージェント非対応のことが多く、EPP単体で直接保護できない場合があります。その場合は、専用のIoT/プリンター向けセキュリティやネットワーク側の制御と併用するのが一般的です。
EPPが担う「事前防御」というセキュリティ上の役割
EPPが担うセキュリティ上の最も重要な役割は、マルウェアや不正プログラムがエンドポイントに侵入する前に検知し、ブロックする「事前防御」です。これは、攻撃が成功してから対処するのではなく、水際で脅威を食い止めるという考え方に基づいています。
具体的には、EPPは以下のような防御アクションを自動的に実行します。
- 既知および未知のマルウェアをリアルタイムで検出
- 検出した脅威を即座にブロックし、実行を阻止
- 感染ファイルを隔離して他のシステムへの拡散を防止
- 必要に応じて脅威を駆除し、設定の修復や自動復旧を行う
この事前防御のアプローチは、事後対応を担うEDRとは明確に役割が異なります。EDRが侵入後の検知や調査、復旧を目的とするのに対し、EPPはそもそも侵入を許さないことを目指します。
現代の企業セキュリティ体制において、この「侵入される前に防ぐ」という考え方は、被害を最小限に抑えるための第一の防衛線として位置づけられています。攻撃が成功してからでは情報漏洩や業務停止といった深刻な被害が発生するため、EPPによる事前防御が企業の安全を守る基盤となっているのです。
EPPが注目される背景と市場動向

近年、EPPへの需要が急速に高まっている背景には、働き方やサイバー攻撃の変化という社会的・技術的な要因があります。特にテレワークの普及により、社員が社外から業務システムにアクセスする機会が増え、従来の境界型防御では守りきれない状況が生まれました。同時に、サイバー攻撃は年々巧妙化しており、従来型のアンチウイルスソフトでは検知できない未知の脅威が増加しています。
こうした状況を受けて、ゼロトラストという「すべてを信頼しない」前提に立つセキュリティ概念が浸透し、エンドポイント一台一台を守るEPPの重要性が再認識されるようになりました。
市場規模の面でも、EPPへの注目度の高さが裏付けられています。Emergen Research(2022年6月17日発表)によれば、EPP市場規模は2021年の33億3,000万ドルから2030年には69億1,000万ドルへと約2倍に拡大すると予測されています。
EPPの提供形態には、クラウド型とオンプレミス型の2種類があります。特にクラウドベースのEPP市場が拡大傾向にあり、2022年時点で市場の55.1%を占めています。その理由として、以下の点が挙げられます。
- 初期導入コストが低く、中小企業でも導入しやすい
- サーバー管理やメンテナンスの負担が少ない
- リモートワーク環境でも一元管理が可能
このように、EPPは技術的な必要性と市場の成長性の両面から、今後ますます重要なセキュリティ対策として位置づけられています。
>Emergen Research|エンドポイント保護プラットフォーム市場 レポート概要
テレワーク普及による境界型防御の限界
新型コロナウイルス感染症の拡大を契機に、テレワークやハイブリッドワークが急速に普及しました。これにより、従業員が自宅やカフェ、サテライトオフィスなど、社内ネットワークの外から業務システムにアクセスする機会が大幅に増加しています。
従来の企業セキュリティは、社内ネットワークを信頼できる領域とみなし、外部との境界にファイアウォールなどを設置して防御する「境界型防御」が主流でした。しかし、テレワークの常態化により「社内は安全、社外は危険」という前提そのものが成り立たなくなっています。
境界型防御の限界として、次のような課題が顕在化しました。
- 社外ネットワークからクラウドサービスへ直接アクセスする場合、境界型防御単独では端末や通信を十分に保護しきれない
- 私物端末や管理外デバイスの業務利用によるリスクの増大
- VPNは通信路を保護するが、端末が感染していれば脅威が社内側へ到達し得る
こうした状況を受けて、ネットワークの境界ではなく、エンドポイント一台一台を直接守る必要性が高まりました。その結果、EPPによるエンドポイント保護が企業セキュリティの要として再認識されるようになったのです。
サイバー攻撃の巧妙化とゼロトラストの浸透
近年、サイバー攻撃は従来の手法を大きく超える勢いで巧妙化しています。ランサムウェアによる身代金要求、特定組織を狙った標的型攻撃、メモリ上で主に動作しディスク上にほとんど痕跡を残さないファイルレス攻撃など、攻撃者は既知のパターンに依存しない新しい手法を次々と編み出しています。こうした高度な脅威に対して、従来のシグネチャ型検知だけでは防ぎきれない状況が明確になってきました。
このような背景から、企業のセキュリティ戦略は大きな転換期を迎えています。特に注目されているのが「ゼロトラスト」という考え方です。これは「すべてのアクセスを疑い、常に検証する」という原則に基づくもので、社内外の境界を問わず、あらゆる通信やデバイスを信頼せず検証するアプローチです。この新しいセキュリティモデルにおいて、EPPはエンドポイントという最前線で脅威を検知・防御する重要な役割を担う存在として位置づけられています。
さらに、EPPを取り巻くセキュリティエコシステム全体も進化を続けています。
- EDRとの統合による検知後の対応力強化
- XDRによる複数セキュリティ層の横断的な脅威分析
- クラウド型管理による一元的な可視化と運用効率化
具体的には上記の形で、EPP単体ではなく統合的なセキュリティ基盤の一部として機能する方向へと発展しています。
EPPの主な機能と脅威検知の仕組み

EPPは企業のエンドポイントを守るために、複数の機能を統合的に提供するプラットフォームです。代表的な機能として、既知のマルウェアを検知・ブロックするアンチウイルス機能、不正な通信を遮断するファイアウォール機能、業務に不要なアプリケーションの起動を制限するアプリケーション制御、USBメモリなどの外部デバイスの接続を管理するデバイス制御、危険なWebサイトへのアクセスを防ぐWeb保護機能などが挙げられます。これらの機能は単独で動作するのではなく、統合管理コンソールから一元的に設定・監視できる点が大きな特徴です。
EPPは主として「事前防御」を担う役割を持ちますが、多くの製品は振る舞い検知や隔離・修復などの基本的な侵入後対処機能も備えています。つまり、マルウェアや不正アクセスがエンドポイントに侵入する前の段階で脅威をブロックすることが主な目的ですが、侵入を許してしまった場合でも、一定の検知や初動対応が可能です。
ただし、侵入後の詳細な可視化・ハンティング・封じ込めや高度な自動対応といった本格的な事後対応は、EDRと呼ばれる別のセキュリティツールが担当する領域です。近年ではEPPとEDRが統合されて提供されるケースも一般的になっており、両者の境界は重なりつつあります。このようにEPPは「入口対策」を中心としながらも、組織全体のセキュリティ戦略において重要な役割を果たしています。
| 機能 | 主な役割 | 対象となる脅威例 |
|---|---|---|
| マルウェア検知・ブロック | 既知・未知のウイルスを検出して侵入を防止 | マルウェア全般・ゼロデイ攻撃 |
| ファイアウォール | 不正な通信を遮断 | 外部からの不正アクセス・情報漏洩 |
| アプリケーション制御 | 業務外ソフトウェアの実行を制限 | 不審なプログラムの実行 |
| デバイス制御 | 外部デバイスの接続を管理 | USBメモリ経由の感染・情報持ち出し |
| Web保護 | 悪意あるWebサイトへのアクセスをブロック | フィッシングサイト誘導 |
| 統合管理 | 全端末のセキュリティを一元管理 | 設定漏れ・ポリシー適用ミス |
シグネチャ型検知(アンチウイルス)の仕組みと限界
シグネチャ型検知は、従来型アンチウイルスソフトの中核となる技術であり、過去に確認されたマルウェアのコードやパターンを記録した「シグネチャ(定義ファイル)」と照合することで脅威を検出します。具体的には、エンドポイントに侵入しようとするファイルやプログラムを、データベースに登録された既知のマルウェアの特徴と比較し、一致した場合に脅威として判定する仕組みです。
この方式には明確な強みがあります。既知のマルウェアに対しては高い検出精度を維持でき、誤検知も比較的少ないという利点があります。しかし同時に、シグネチャに未登録の新種や亜種のマルウェアは原則として検出が困難という根本的な限界を抱えています。
特に近年のサイバー攻撃では、既存のマルウェアを少し改変した亜種や、まったく新しいゼロデイ攻撃が高止まり・増加傾向にあり、シグネチャ型検知だけでは防ぎきれない状況が生まれています。さらに運用面でも課題があります。
- 定期的なシグネチャの更新作業が必要になる
- 更新までのタイムラグが生じる
- その間は新たな脅威に対する検出が遅れるリスクが残る
こうした限界から、シグネチャ型検知のみに依存したセキュリティ対策は、現代の脅威環境には不十分とされるようになりました。
次世代アンチウイルス(NGAV)が採用する4つの検知技術
次世代アンチウイルス(NGAV)は、従来のシグネチャ型では検知できない未知のマルウェアやゼロデイ攻撃に対応するため、複数の高度な検知技術を組み合わせています。
代表的な4つの検知技術として、まず機械学習による検知があります。これは大量のマルウェアサンプルから特徴を学習し、未知の脅威でもパターンを認識して検知する技術です。
次に振る舞い検知(動的ヒューリスティック)があり、プログラムの実行時の挙動を監視して、不審な動作を検知します。ファイルの大量削除やレジストリの改ざんなど、マルウェア特有の振る舞いを捉えることができます。
3つ目は静的ヒューリスティックで、ファイルを実行せずにコードの構造や特徴を分析し、悪意のある可能性を判定する技術です。
4つ目はサンドボックスによる検知で、隔離された仮想環境内で疑わしいファイルを実行し、その挙動を安全に観察することで脅威を判定します。多くの製品ではクラウド側のデトネーション環境を活用し、より高度な動的解析を実現しています。
これら4つの技術を組み合わせることで、NGAVは未知の脅威にも高い検知率を実現しています。ただし現在のNGAV製品の多くは、既知の脅威に対しては従来のシグネチャ型検知も併用しており、複合的なアプローチが標準となっています。
| 検知技術 | 概要 | 主な強み |
|---|---|---|
| 機械学習 | 大量のデータを自動学習し、未知の脅威を統計的に判定 | 新種・亜種マルウェアへの対応力が高い |
| 振る舞い検知(動的ヒューリスティック) | 実行中のプログラムの挙動を監視し、不正動作を検出 | ファイルレス攻撃や未知マルウェアへの対応 |
| 静的ヒューリスティック | プログラムを実行せずにコード構造を分析 | 実行前の早期検知が可能 |
| サンドボックス | 隔離した仮想環境でプログラムを動作させて脅威を判定 | 高リスクなファイルを安全に解析できる |
EPPとEDRの違い:役割・目的・使い分けの考え方

EPPとEDRは、どちらもエンドポイントを守るセキュリティ製品ですが、その役割と目的は明確に異なります。EPPは「侵入前の事前防御」を担当し、マルウェアや不正なプログラムがエンドポイントに侵入する前に検知してブロックすることを主な目的としています。一方、EDRは「侵入後の検知・封じ込め・対応」に特化しており、万が一脅威が防御をすり抜けてシステム内に侵入した場合に、その動きを監視・記録し、迅速に対処するための製品です。
両者の使い分けの考え方として、以下のポイントを押さえておくことが重要です。
- EPPは入口対策として、既知・未知の脅威を水際で防ぐ役割を果たす
- EDRは侵入後対策(事後対策)として、侵入を許した脅威の検知・封じ込めを行い、原因究明と復旧を支援する
- 現代のサイバー攻撃は100%防ぐことが困難なため、EPPだけでは不十分とされている
したがって、理想的なセキュリティ体制は、EPPで大部分の脅威を防ぎつつ、それでも侵入した高度な脅威に対してはEDRで対応するという、両製品の併用による多層防御の実現です。EDRについてのより詳しい情報は、当サイトの関連記事「EDRとは?サイバー攻撃対策の仕組みや機能・選び方・導入ポイントを解説」をご参照ください。
| 比較項目 | EPP | EDR |
|---|---|---|
| 主な目的 | 脅威の侵入を未然に防ぐ(事前防御) | 侵入した脅威を検知・封じ込め・除去する(事後対応) |
| 対応するフェーズ | 侵入前 | 侵入後 |
| 検知方法 | シグネチャ・機械学習・振る舞い検知 | ログ監視・リアルタイム挙動分析 |
| 主な機能 | マルウェアブロック・隔離・駆除 | アラート通知・端末隔離・フォレンジック調査・復旧支援 |
| 単独での限界 | 高度な攻撃をすり抜ける可能性がある | 侵入前の予防はできない |
EPPとEDRを併用することで実現する多層防御
EPPとEDRは、それぞれ異なる役割を担いながら相互に補完し合う関係にあります。EPPは主に侵入前の予防(NGAVや攻撃面削減など)を担い、EDRは”侵害前提”で侵入後の検知・調査・封じ込め・自動応答を担います。この二重の防御網により、未知の脅威や高度な攻撃に対しても被害を最小限に抑えることが可能になります。
攻撃のフェーズと対応ツールの関係を整理すると、次のようになります。
- 侵入前の段階ではEPPが既知・未知の脅威を検知してブロック
- 侵入後の段階ではEDRが不審な挙動を監視して早期に対処
- インシデント発生時はEDRが詳細な調査と復旧を支援
このように役割を分担することで、攻撃の各段階に応じた適切な対策を講じることができます。近年では、EPPとEDRの機能を一体化した統合型製品が主流になりつつあります。主要ベンダの現行製品ではEPP側にも一部の検知・自動修復機能が含まれるようになっており、導入時の製品選定や運用時の管理負担が軽減され、セキュリティ対策の効率化が実現できるようになっています。
EPPとアンチウイルスソフトの違い
EPPとアンチウイルスソフトは混同されることが多いですが、厳密には異なる概念です。アンチウイルスソフトは主にマルウェアの検知・駆除機能を指し、消費者向けに限らず企業向けにも広く提供されています。企業環境では集中管理やポリシー配布と組み合わせて運用されるのが一般的です。一方、EPPはアンチウイルス機能を含む、より広範なエンドポイント保護製品群の総称として位置づけられています。
企業向けのセキュリティ製品においては、次のような特徴で区別されます。
- アンチウイルス機能は消費者・企業の双方で提供される
- EPPはアンチウイルスを含む広範な機能(ファイアウォール、IPS、ふるまい検知、デバイス/アプリ制御、暗号化等)と中央管理・ポリシー配布・レポートを統合した企業向けスイートを指す
- 製品の呼称はベンダーにより異なるが、企業向けではEPP(しばしばEDRと統合)として提供されることが一般的
つまり、EPPは単なるウイルス対策にとどまらず、企業全体のエンドポイントを統合的に管理・保護するためのプラットフォームとしての性格を持っています。管理者が全社のセキュリティポリシーを一括適用したり、脅威の発生状況を可視化したりする機能が求められる企業利用においては、個別のアンチウイルスソフトよりもEPPの方が適しているといえます。
なお、UTM(統合脅威管理)との違いにも触れておくと、UTMはネットワーク境界でファイアウォールやIPS、アンチウイルスなどを統合的に提供する装置であるのに対し、EPPはあくまでエンドポイント端末そのものを保護する製品です。両者は守る場所と役割が異なるため、併用することで多層的な防御体制を構築できます。
EPP導入のメリットと導入前に確認すべき注意点

EPPを導入することで、企業や情報システム部門は多くのメリットを享受できます。まず、エンドポイント全体に対する統一的なセキュリティポリシーの適用が可能になり、管理負担が大幅に軽減されます。また、既知・未知の脅威を事前に防御することで、マルウェア感染による業務停止やデータ漏洩といった重大なインシデントのリスクを低減できます。さらに、テレワーク環境下でも社外のデバイスを保護できるため、働き方の多様化に対応した柔軟なセキュリティ体制を構築できる点も大きな利点です。
一方で、EPPは強力なセキュリティ手段である反面、導入前に理解しておくべき注意点も存在します。例えば、既存のセキュリティ製品との競合や互換性の問題、導入時のエンドポイントへの負荷、そして運用体制の整備といった課題です。これらを事前に把握せずに導入を進めると、期待した効果が得られなかったり、かえって業務に支障をきたしたりする可能性があります。したがって、EPPの導入を検討する際には、メリットと注意点の両面をセットで理解し、自社の環境や運用体制に適した製品選定と導入計画を立てることが重要です。
EPP導入で得られる3つのメリット
EPP導入によって企業が得られる主なメリットは3つあります。
- 既知・未知の脅威を侵入前に遮断できる
- 全端末の一括管理で管理者の負担を削減できる
- セキュリティ基準・法令対応の証跡として活用できる
第一に、シグネチャ型検知と次世代アンチウイルスを組み合わせることで、既知のマルウェアだけでなく未知の脅威も侵入前にブロックできます。これによりエンドポイントの防御レベルが大幅に向上し、感染後の被害拡大を未然に防ぐことが可能になります。
第二に、統合管理コンソールを通じて全端末のセキュリティ状態を一元的に把握し、ポリシー設定の一元管理に加え、多くのEPP製品や連携するUEM/MDM・パッチ管理機能を通じてパッチ適用を一括実施できるため、IT管理者の運用負荷が大きく軽減されます。散在する端末を個別に管理する手間が省け、セキュリティの均質化も実現できます。
第三に、EPPが記録する監査ログやアクセス制御、デバイス制御などの機能は、ISO/IEC 27001をはじめとするセキュリティ基準やコンプライアンス要件への対応において重要な証跡となります。監査対応や内部統制の強化にも大いに役立ちます。
導入前に把握しておくべき3つの注意点
EPPを導入する前に把握しておくべき注意点として、以下の3つが挙げられます。
- 誤検知が業務システムの動作に影響を与える場合がある
- シグネチャ/定義ファイルに加え、振る舞い検知ルールや機械学習モデル、クラウド評価エンジン、エージェント等の継続的な更新管理が前提になる
- 高度な攻撃はEPP単独では対処しきれないケースがある
まず1点目として、正常なファイルやプログラムを脅威と判断する「誤検知」が発生する可能性があります。誤検知が起きると業務に必要なアプリケーションが起動できなくなったり、重要なファイルがブロックされたりする恐れがあるため、本番環境への導入前には必ずテスト運用を実施し、ホワイトリスト設定を適切に行うことが不可欠です。
2点目として、シグネチャ/定義ファイルだけでなく、振る舞い検知ルールや機械学習モデル、エージェント等の定期的なアップデートを怠ると、最新の攻撃手法に対応できなくなる点に注意が必要です。自動更新機能を有効にするだけでなく、運用ポリシーの継続的な見直しや、更新状況の定期的な確認体制を整えることが求められます。
3点目として、高度な攻撃に対してEPP単独では防ぎきれないケースがあることを理解しておく必要があります。そのため、導入検討の段階からEDRや他のセキュリティ対策との組み合わせによる多層防御を前提として、全体的なセキュリティ体制を設計することが重要です。
EPP/EDRの選定ポイントとDeep Instinctの活用

EPPやEDRを導入する際には、自社のセキュリティ要件や運用体制に合った製品を選ぶことが重要です。選定時に確認すべきポイントとして、まず検知方法が挙げられます。シグネチャ型だけでなく、振る舞い検知や機械学習など複数の技術を組み合わせた製品を選ぶことで、既知・未知の脅威双方に対応できます。
次に運用形態の確認も欠かせません。クラウド型は導入が容易で最新の脅威情報を自動更新できる一方、オンプレミス型は社内ネットワークに閉じた運用が可能でデータの外部流出リスクを抑えられます。自社の業務形態やセキュリティポリシーに応じて適切な形態を選択しましょう。
また、導入コストとサポート体制も重要な判断材料です。初期費用だけでなくライセンス更新費用や運用コストを含めた総保有コスト(TCO)を試算し、ベンダーが提供する技術サポートやインシデント対応支援の内容を事前に確認しておくことが求められます。
近年、AIベースの次世代エンドポイントセキュリティとして注目されているのがDeep Instinctです。この製品は深層学習(ディープラーニング)を活用しており、従来の機械学習よりも高度なパターン認識が可能です。未知のマルウェアやゼロデイ攻撃に対しても、実行前の段階で脅威を検知・防御できる点が大きな特徴となっています。
市場全体としてEPPとEDRの機能を統合した製品も増えていますが、Deep Instinctは深層学習に基づく予防(pre-execution)に特化したエンドポイント製品です。EDR製品と併用・連携することで、予防と検知・対応の両面から包括的なエンドポイント保護を実現できます。
EPP製品を選ぶ際の4つの確認ポイント
EPP製品を選ぶ際には、自社の環境や運用体制に適した製品を見極めることが重要です。確認すべきポイントとして、次の4点を押さえておきましょう。
- 検知方式が自社の脅威モデルと合っているか
- 運用形態と導入コストが自社の体制に合っているか
- EDRとの統合・セット提供に対応しているか
- ベンダーのサポート体制が運用負荷の軽減に貢献できるか
まず、製品が採用する検知方法を確認します。従来型のシグネチャ型検知のみなのか、次世代アンチウイルス(NGAV:機械学習・振る舞い検知・メモリ/スクリプト防御等)に対応しているのかを、自社が想定する脅威モデルや要件と照らし合わせて判断してください。
次に、クラウド型(SaaS管理コンソール等)かオンプレミス型か、加えて課金単位(端末/ユーザー)、最低購入単位、年次コミットメント、アドオン(サンドボックス/MDR等)の有無を含めてコスト構成を比較検討します。端末台数が多い場合は、ボリュームディスカウントの有無も確認しておくとよいでしょう。
また、EDRとのセット提供や統合(将来的なXDR拡張可否を含む)かどうかという観点も選定基準に含めることが大切です。統合された製品の方が運用負荷を軽減できる可能性があります。
最後に、ベンダーのサポート体制を確認しましょう。24時間365日対応の有無、導入支援の充実度、マネージドサービス(MDR)の提供状況などを把握し、自社の運用体制に合ったサポートを選ぶことで、導入後の安定運用につながります。
エンドポイントセキュリティDeep Instinctの導入も検討
エンドポイントセキュリティの選定において、Deep Instinctは有力な選択肢の一つです。Deep Instinctは深層学習(ディープラーニング)を活用したエンドポイントセキュリティソリューションで、従来のシグネチャ型検知に依存せず、既知・未知のマルウェアや脅威をエンドポイントで予測・ブロックできる点が特徴です。
他のEPP/EDR製品との大きな差別化ポイントとして、次の2点が挙げられます。
- 脅威の実行前(事前)に予測検知できる
- 外部検証で誤検知率0.1%未満と報告されるなど、誤検知率が極めて低い
特に脅威が実行される前に予測してブロックできることは、被害を未然に防ぐ上で非常に重要です。多くのEPP/EDRは実行後の検知・対応も併用しますが、Deep Instinctは実行前の予測的ブロックを主軸としており、この事前予測機能は大きなアドバンテージとなります。
なお、KAGOYAでもDeep Instinctを取り扱っており、同グループのTDIと連携して評価・導入・運用まで支援しています。製品の詳細はKAGOYAの専用ページ、導入事例はDeep Instinct公式サイトからも確認できますので、EPP/EDR製品の選定時にはぜひ検討してみてください。
エンドポイントセキュリティ Deep Instinct | KAGOYA
AIで未知の脅威とランサムウェアを先読み防御。企業を守る次世代エンドポイント防御ソリューションです。
まとめ
本記事では、エンドポイントセキュリティの要となるEPPについて、その基本概念から導入のポイントまで幅広く解説してきました。EPPはテレワークの普及やサイバー攻撃の巧妙化により、従来の境界型防御では守りきれなくなった企業のエンドポイントを保護する重要な役割を担っています。シグネチャ型検知の限界を超えた次世代アンチウイルス技術により、未知の脅威にも対応できる点が大きな特徴です。
また、EPPは事前防御を担う一方で、EDRは事後対応に強みを持つため、両者を併用することで多層防御を実現できます。導入にあたっては、自社のエンドポイント環境や運用体制を十分に把握し、検知精度や管理のしやすさ、既存システムとの連携性などを確認することが重要です。
適切なEPP製品を選定し、必要に応じてEDRとの統合ソリューションを活用することで、企業のセキュリティレベルを大きく向上させることができます。ぜひ本記事の内容を参考に、自社に最適なエンドポイントセキュリティ対策を検討してみてください。








