Gmailは日本を含め、世界的に最もよく使われているメールサービスのひとつです。メール配信者にとって、Gmail宛てのメールが迷惑メールと判定されるか否かは非常に重要な問題といえます。
GmailのPostmaster Toolsは、Gmail宛てのメール到達率を改善したいときに有効なツールです。Gmail宛てのメールが頻繁に迷惑メール判定され困っている場合は、Postmaster Toolsが役に立つでしょう。
この記事では、Postmaster Toolsとは何かといった基本からメリット、使い方、注意点まで解説しています。この記事の内容を理解すれば、Postmaster Toolsを有効に使い始めることが可能です。
目次
Postmaster Toolsとは | Gmail宛メール送信用の分析ツール
GoogleのPostmaster Toolsとは、自社からGmail宛に送ったメールが迷惑メールと判定されやすいか、迷惑メール報告されていないか確認できる無料ツールです。
Postmaster Toolsでは、送信元ドメインやメールサーバーのIPアドレスに対する評判、迷惑メール報告率などのデータを参照できます。これらデータをみることで、自社からGmail宛に送ったメールが迷惑メールと判定されるリスクが高いか否かを推測できるのです。
IPレピュテーション(評判)が悪いメールサーバーから送られたメールは、送信先にて迷惑メールと判定されやすくなります。詳細は後述しますが、Postmaster Toolsではレピュテーションなどの確認が可能です。
Postmaster Toolsで確認できる内容
Postmaster Toolsでは、Gmail宛に送ったメールが迷惑メールと判定されるリスクがどのくらいか推測するのに役立つ統計データが提供されています。以下、具体的にどのようなデータが提供されているかみていきましょう。
迷惑メール報告率(Spam Rate)
Gmail宛に送ったメールのうち、受信者が迷惑メールであると報告した割合です。迷惑メール報告率が高い場合、Gmailユーザーが自社メールを迷惑メールと認識する可能性が高いと判断できます。また迷惑メール報告率が高い送信元からのメールは、Gmailで迷惑メールと判定されやすくなるので注意が必要です。
一方、迷惑メール報告率が低いからといって、必ずしも自社メールがGmailで迷惑メールと判定されないというわけではありません。自社からGmailへ送ったメールのうち、かなりの割合がすでに迷惑メール判定されている状態だったとします。この場合、自社メールは直接迷惑メールボックスへ保存される確率が高くなり、結果として迷惑メール報告率が低くなる可能性があるわけです。
迷惑メール報告率は、「これから自社メールが迷惑メール判定される可能性が高いか」を推測するための指標にするとよいでしょう。現時点で自社から送ったメールが迷惑メールと判定されやすいかは、他のデータとあわせて検討することが必要です。
なおGmailのガイドラインでは、迷惑メール報告率について以下のように記載しています。
Postmaster Tools で報告される迷惑メール率を 0.10% 未満に維持し、迷惑メール率が決して 0.30% 以上にならないようにします。
これを見る限り、迷惑メール報告率が0.3%以上になると、今後自社メールが迷惑メールと判定されやすくなると考えた方がよいでしょう。ガイドラインにある通り、迷惑メール報告率は0.1%未満を維持することを目指すとよいです。
IPアドレスのレピュテーション(IP Reputation)
送信元メールサーバーのIPアドレスが、Gmailの迷惑メールフィルタで迷惑メールの送信元とみなされていないか判断できる指標です。IPアドレスのレピュテーションが高ければ(評判がよければ)、自社メールが迷惑メール判定されてしまう可能性が低いと判断できます。
一方で自社が送ったメールを、Gmailユーザーが迷惑メールとしてマークすると、その分IPアドレスのレピュテーションは下がります。ユーザーの評価が、IPレピュテーションに直結するわけです。
IPアドレスのレピュテーションにおける評価基準は、以下の4種類があります。
種類 | 概要 |
---|---|
High(高) | Gmailの送信ガイドラインに準拠しており、送信メールが迷惑メールと判定される可能性は非常に低い |
Medium(中) | 比較的評判は良いが、少量のメールが迷惑メールと判定される可能性がある |
Low(低) | 評判が悪く、多くの送信メールが迷惑メールと判定される可能性がある |
Bad(不良) | Gmail宛に、大量の迷惑メールを送信した際の評価。この評価だった場合は、ほとんどの送信メールが配送の時点で拒否されるか迷惑メールと判定される可能性がある。 |
ドメインのレピュテーション(Domain Reputation)
送信元メールアドレスのうち、ドメイン部分に対する評価です。ドメインに対する評価が高い場合、そのドメインから送られたメールはGmailで迷惑メールと判定される可能性が低いと判断できます。
ドメインのレピュテーションに関する評価基準は、IPアドレスのレピュテーションと同様で以下の4つです。
種類 | 概要 |
---|---|
High(高) | Gmailの送信ガイドラインに準拠しており、送信メールが迷惑メールと判定される可能性は非常に低い |
Medium(中) | 比較的評判は良いが、少量のメールが迷惑メールと判定される可能性がある |
Low(低) | 評判が悪く、多くの送信メールが迷惑メールと判定される可能性がある |
Bad(不良) | Gmail宛に、大量の迷惑メールを送信した際の評価。この評価だった場合は、ほとんどの送信メールが配送の時点で拒否されるか迷惑メールと判定される可能性がある。 |
フィードバックループ(Feedback Loop)
Gmailによる「Feedback Loop」の仕組みを利用している場合に限り、本統計データが表示されます。Feedback Loopとは受信者に迷惑メール報告された際に、それを送信元に報告する仕組みです。Postmaster Tools の本項では、Feedback Loopにより報告された迷惑メールの割合が表示されます。
メール送信認証トラフィック(Authentication)
Gmail宛てに送信されたメールのうち、SPF、DKIM、DMARC での認証に成功したメールの割合です。これらの割合が高いほど、送信元が信頼され迷惑メールと判定されづらくなります。
暗号化トラフィック(Encryption)
自社メールとGmail間で送受信されたメールのうち、TLSによる暗号化がおこなわれたメールの割合を表示します。具体的なデータの内容は以下の通りです。
種類 | 概要 |
---|---|
Inbound TLS rate | Gmail宛に送ったメールのうちTLS暗号化がおこなわれた割合 |
Outbound TLS rate | Gmail宛に送られたメールのうちTLS暗号化がおこなわれた割合 |
配信エラー
Gmail宛てにおこなったメール送信のうち、エラーになったり一時的に配信失敗したりしたトラフィックの割合です。グラフの下部には、その理由も表示されます。
- 送信ドメインの評判が悪い
- 送信IPアドレスの評判が悪い
- 大量のメール送信が検知されており、一時的にレート制限をかけたなど
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Postmaster Toolsを使う主なメリット
Postmaster Toolsは、メール配信をおこなう企業にとって非常に有益なツールです。以下、実際にどのようなメリットがあるかみていきましょう。
Gmail宛てのメール到達率を改善する際の指標にできる
自社から特定のドメイン宛にメールが届かない状態が発生した場合、送信元がその理由を調べるのは難しいケースは少なくありません。メールを拒否したり迷惑メールと判定したりしたのは、送信側でなく受信側だからです。
その点Postmaster Toolsを使えば、統計データから迷惑メール判定された原因を推測できます。そのうえで、これら統計データを指標としてGmail宛にメールが正常に届くよう対策もしやすくなるのです。
メール配信の際に重要なレピュテーションを把握・監視できる
Gmail宛にメール配送をする際に限らず、レピュテーションはメール配信の際に重要な要素です。IPアドレスやドメインのレピュテーションが悪ければ、Gmail宛て以外のメールも迷惑メールと判定される可能性が高まります。その結果、それらの宛先へメールが到達しないリスクが生じるのです。
その点、Postmaster Toolsを使えば、IPアドレスやドメインのレピュテーションを把握できます。Gmail以外の宛先に対するメール配送の到達率を改善したい際も、Postmaster Toolsを役立てられるのです。
Postmaster Toolsの使い方
ここではPostmaster Toolsを使う手順を解説します。
- まずは、Postmaster Toolsの以下公式サイトURLへアクセスして下さい。
>https://www.gmail.com/postmaster
Postmaster Tools画面が開いたら画面中央にある「Get Started」をクリックして下さい。 - 「ようこそ」画面が表示されたら「開始」をクリックします。
- 「メールの認証に使用するドメイン」を聞かれるので、Postmaster Toolsで統計をとるドメインを入力して「次へ」をクリックして下さい。
- 所有権の確認画面へ遷移します。
画面の指示に従い、対象ドメインのTXTレコードに記載のDNSレコードを登録して下さい。DNSレコードの登録方法は、DNSサーバーのマニュアルなどで確認しましょう。
DNSレコードの登録が完了したら「所有権を証明」をクリックします。 - ドメイン所有権の確認が終わったら完了画面が表示されるので「完了」をクリックして下さい。
これで設定は完了です。
データ収集が開始され、本画面から各種統計を参照できるようになります。
Postmaster Tools利用時の注意点
Postmaster Toolsは簡単に使えるツールですが、いくつかの点に注意しなければ有効に活用できません。以下、Postmaster Tools利用時の注意点をみていきましょう。
Gmail宛の送信メールを対象とした統計である
Postmaster Toolsで統計をおこなうのは、Gmail宛のメールだけです。ほかの宛先へ配信したメールは統計の対象外となる点は覚えておきましょう。
専門的なDNSの設定が必要
Postmaster Toolsを使うためには、DNSサーバーにDNSレコードの登録が必要です。そのためDNSに関わる専門知識が求められます。
統計を提供するシステムであり、Gmailへの到達率を直接改善するシステムではない
Postmaster Toolsは、Gmail宛のメールが迷惑メール判定されやすい状態になっていないかを確認するためのツールです。このツールを使うだけでは、Gmail宛のメールが迷惑メールと判定されなくなったり、到達率が改善されたりはしません。
Gmail宛てのメール到達率を改善するためには、本ツールのデータを参考にレピュテーションを改善するなどの対策が必要です。
SPF・DKIMが設定済で一定の送信料量がなければ統計が表示されない
Postmaster Toolsで統計が開始されるためには、対象ドメインでSPFもしくはDKIMの設定が必要です。そのうえでGmail宛てにメールが一定数送信されないと、統計が表示されません。
SPF・DKIMについては、以下記事が参考になります。
【図解】DKIMとは?SPFとの違い、最新のDMARCも!なりすましメール対策の仕組みを解説
個人・企業を問わず、送信元を詐称されたメールによる被害が後を絶ちません。中でも企業を対象とした攻撃の事例では、その被害額が甚大になることもあります。この攻撃を対策するためには、DKIM(ディーキム)やSPF(エスピーエフ)・DMARC(ディーマーク)といった送信ドメイン認証による対策が不可欠です。この記事ではDKIMとは何かや、古くからあるSPF、最新のDMARCとの違いについて解説します。 Pi…
Postmaster Toolsでスコアが悪かった場合の対処法
Postmaster Toolsでスコアが悪かった場合は、以下にあげる対策をおこないレピュテーションや迷惑メール報告率の改善を目指しましょう。
・メルマガなどを配信する際は「登録解除」「配信停止」のリンクを設置する
メルマガなどの場合、読者が簡単に登録解除・配信停止をおこなえないと迷惑メールとして報告されてしまう可能性が高まります。
・メール送信の頻度を見直す
必要以上にメルマガなどを送信すると、読者が煩わしく感じ迷惑メールと判断される可能性が高くなります。レピュテーションが低い場合、送信頻度の見直しも必要です。
・メール送信内容を見直す
メルマガなどでは、読者のニーズと乖離すると開封率が低下するだけでなく迷惑メールとみなされる可能性も高まります。レピュテーションが悪い場合、メール送信内容の見直しも必要です。
・メールの配信先リストを定期的にクリーニングする
メール配信先リストには、誤ったメールアドレスや削除済のメールアドレスが含まれている場合があります。届かない宛先へ何度もメールを送っていると、レピュテーションが低下する原因となり得るのです。メール配信先リストから、無効なメールアドレスを定期的に削除する必要があります。
Gmail宛てにメールが届かない場合の対処法は、以下記事でも紹介しているので興味があればあわせて参照ください。
Gmailへのメールが2024年6月に届かなくなる?早急に必要な対策について
https://www.kagoya.jp/howto/engineer/communication/202406gmail/
Gmailに届かない?原因と対策を知って問題解決へ
https://www.kagoya.jp/howto/engineer/communication/gmailnotarriving/
まとめ
Postmaster Toolsは、自社からGmailへ送ったメールが迷惑メール判定されやすい状態か確認できる無料ツールです。具体的にはGmail宛に送ったメールの迷惑メール報告率や、ドメイン・IPアドレスのレピュテーションなどを確認できます。
Gmail宛のメールが大量に迷惑メール判定され困っているメール配信者の方は、まずPostmaster Toolsを使うとよいでしょう。そのうえで必要に応じて適切な対応をおこない、レピュテーションなどのスコアが改善するかチェックするのです。スコアが改善すれば、Gmail宛のメールも正常に到達するようになると考えられます。
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