
プライベートクラウドを導入する企業が増える中、最適なネットワーク接続方法の選択に悩む担当者は少なくありません。
本記事では、IP-VPN、専用線、広域イーサネットなど、プライベートクラウドの主要な接続方式とそれぞれの特徴を解説します。また、セキュリティ対策の重要ポイントや実際の導入事例も紹介します。
情報システム部門の方々やIT基盤の刷新を検討している経営層の皆様にとって、安全で効率的なプライベートクラウド環境構築の指針となる情報をお届けします。
目次
プライベートクラウドのネットワーク接続の種類
プライベートクラウドを構築する際、オンプレミス環境との接続方法は重要な検討事項です。主な接続方法としては、IP-VPN接続、専用線接続、広域イーサネットの3種類があります。それぞれ特性が異なり、セキュリティレベル、通信品質、コストなどの観点から選択する必要があります。企業規模や業務内容、予算、必要なセキュリティレベルによって最適な接続方法は変わってきます。自社のニーズを明確にした上で、適切なネットワーク接続方式を選定することが、安定したプライベートクラウド環境構築の鍵となります。
種類 | 概要 |
---|---|
IP-VPN接続 | 通信事業者の閉域IP網を利用して、仮想的な専用線を構築するネットワークサービスです。 |
専用線接続 | 特定の2拠点間を物理的な通信回線で直接接続し、帯域を保証する占有型のネットワークサービスです。 |
広域イーサネット | 離れた拠点間をイーサネット(LAN)と同じ感覚で接続できる、柔軟性と拡張性に優れたネットワークサービスです。 |
IP-VPN接続
IP-VPN接続は、インターネットを経由せず通信事業者の閉じたネットワークを利用してプライベートクラウドに接続する方法です。通信事業者が提供するVPN網を介して安全な通信環境を構築できるため、高いセキュリティレベルを確保できます。また、帯域保証オプションを選べるキャリアがあり、要件に応じて安定通信を確保できる点も大きなメリットです。
一方で、専用線と比較するとコストを抑えられますが、プロトコルがIPに限定され、IP以外のレガシープロトコル(IPX など)が使えないデメリットもあります。IP-VPN接続は特に、セキュリティを重視しながらもコスト効率を考慮したい中堅企業や、全国に複数の拠点を持つ企業に適しています。
既存のIP-VPN網を利用している企業であれば、追加投資を最小限に抑えてプライベートクラウド環境に接続できるため、スムーズな移行が可能です。
専用線接続
専用線接続は、企業とプライベートクラウド環境を直接接続する最も信頼性の高い方法です。通信キャリアが提供する物理的な専用回線を使用するため、インターネットを経由せず、他の利用者と回線を共有することなく通信が可能となります。
この方法の最大の利点は高いセキュリティと安定した通信品質にあります。帯域幅が保証されているため、常に一定の通信速度を維持でき、大容量データの転送や遅延に敏感なアプリケーションの運用に適しています。一方で、初期導入コストや月額利用料が他の接続方法と比較して高額になる点がデメリットです。
専用線接続は、金融機関や医療機関など機密性の高いデータを扱う企業や、基幹システムをクラウドで運用する大規模企業に特に適しています。24時間365日の安定稼働が求められるミッションクリティカルなシステムを運用している企業にとって、専用線接続は最適な選択肢となるでしょう。
広域イーサネット
広域イーサネットは、複数拠点間をイーサネット技術で接続するWANサービスで、LANをそのまま拡張したかのような使い勝手が特徴です。IPアドレスの自由な設計が可能で、VLANによる論理的なネットワーク分割にも対応しています。最大のメリットは柔軟な帯域設定にあり、必要に応じて帯域を増減できるため、成長中の企業に適しています。
一方、デメリットとしては、サービス提供エリアが限定的な場合があり、専用線と比べると品質保証のレベルがやや劣ることが挙げられます。また、VLAN設計を含むため運用負荷が増える場合もあります。
特に複数拠点を持ち、それらの間で大容量データのやり取りが頻繁に発生する企業や、コスト効率を重視する中堅企業にとって最適な選択肢となるでしょう。
プライベートクラウドで重要なネットワークセキュリティの確立

プライベートクラウド環境では、ネットワークセキュリティの確立が最重要課題となります。社内システムや機密データを守るためには、複数の防御層を構築することが不可欠です。まず、高性能なファイアウォールを導入し、不正なトラフィックを確実にブロックすることで外部からの侵入を防ぎます。
次に、VPN(仮想プライベートネットワーク)を活用することで、ネットワーク上のデータ通信を暗号化し、情報漏洩リスクを大幅に低減できます。さらに、侵入検知・防止システム(IDS/IPS)を配備することで、異常な通信パターンをリアルタイムで検出し、攻撃を未然に防止することが可能になります。
また、ネットワークセグメンテーションを実施し、重要度に応じてネットワークを分離することで、万が一侵害が発生した場合でも被害範囲を最小限に抑えることができます。これらの対策を総合的に実施することで、プライベートクラウド環境の堅牢なセキュリティ基盤を確立することができます。
その他にもあるプライベートクラウドのセキュリティ対策
組織の情報セキュリティは4つの柱で強化できます。「アクセス管理と認証強化」では多要素認証や最小権限の原則を適用し、IAMツールを活用してセッション管理を徹底します。
「データセキュリティと保護対策」では暗号化とバックアップに加え、データの冗長性確保も重要です。「継続的な監視と管理」ではログ分析やパッチ管理、セキュリティ監査を定期的に実施し、インシデント対応計画も策定します。「セキュリティ意識の向上」では従業員教育でフィッシング対策や安全なパスワード管理を習慣化させ、監視カメラや入退室管理などの物理セキュリティも強化します。これらを総合的に実施することで、技術・管理・人的側面からバランスのとれたセキュリティ体制を構築できます。
ポイント | 具体的な対策内容 |
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アクセス管理と認証強化 | ・多要素認証の採用 ・最小権限の原則に基づいた権限管理 ・セッション管理(タイムアウト設定) ・Identity and Access Management (IAM)などの管理ツールの活用 |
データセキュリティと保護対策 | ・データの暗号化による機密情報保護 ・定期的なバックアップと災害対策 ・データの冗長性確保 |
継続的な監視と管理 | ・セキュリティログの収集 ・分析 ・継続的なセキュリティ監査の実施 ・パッチ管理による脆弱性対策 ・インシデント対応計画の策定 |
セキュリティ意識の向上 | ・従業員への定期的なセキュリティ教育 ・フィッシング対策や安全なパスワード管理の習慣化 ・物理セキュリティ対策(監視カメラ、入退室管理) |
KAGOYAのプライベートクラウドで実現する理想の環境
KAGOYAのプライベートクラウドである「プライベートクラウドパッケージ」は、VMwareとWindows Serverの2つの選択肢から最適な環境を構築できます。すでに構築済みの環境を提供するため、導入までの時間を大幅に短縮でき、すぐにビジネスに集中できる環境が整います。
予算や用途に合わせて複数のプランから選択でき、月額定額制のため、予算計画が立てやすく、安定した運用が可能です。また、既存のオンプレミス環境と組み合わせたハイブリッド構成も可能で、リスクを抑えながら段階的な移行ができます。
キャリアフリーで転送量に対して課金がないという特徴もあります。データ転送量を気にせず運用できるのは大きなメリットと言えるでしょう。大容量NASストレージの提供や充実したセキュリティ機能により、安全かつ柔軟なデータ管理が実現します。
さらに、充実したサポート体制も魅力。導入前の支援から作業代行、ハードウェアの障害対応まで一貫したサポートを受けられるため、専門知識がなくても安心して利用できます。最近のBroadcom社によるVMware買収に対しても、KAGOYAは迅速な対応策を準備しており、将来にわたって安定したサービス提供を約束しています。
プライベートクラウドパッケージの構築事例

プライベートクラウドの導入を成功させるためには、実際の事例から学ぶことが非常に効果的です。
プライベートクラウドパッケージでは、様々な業種・規模の企業に導入され、それぞれのビジネス課題を解決してきました。これらの事例では、セキュリティ強化やコスト削減、運用効率の向上など、導入企業ごとに異なる目標が達成されています。
以下では、実際にKAGOYAのプライベートクラウドを導入し、ビジネス変革を実現した企業の具体的な事例をご紹介します。
株式会社シジャム・ビーティービー様
株式会社シジャム・ビーティービーがKAGOYAのクラウドサービスを導入した背景には、既存のパブリッククラウド環境における信頼性の問題がありました。大手クラウドサービスを利用していたものの、短期間で複数回の障害が発生し、エンドユーザーからの問い合わせ対応や緊急復旧作業に追われるなど、業務に支障をきたしていたのです。
導入先の検討段階でKAGOYAを選定した理由は、既に他サービスでの利用実績があり、営業担当との信頼関係が築けていた点が大きく影響しました。また、QCT(品質・コスト・納期)のバランスが優れていたこと、さらには「プライベートクラウドパッケージ」が3Tier仮想化環境を簡単に導入できるパッケージとして提供されていた点も決め手となりました。
導入後は、これまで課題となっていたシステムの突発的な停止や不安定な挙動が解消され、業務運用の安定性が向上しました。また、KAGOYAの「顔の見えるサポート体制」も安心感につながっており、技術的な相談やトラブル時の迅速な対応に対する信頼が、導入後の継続利用の背景にあります。導入プロセスにおいては、仮想環境への移行設計やVPN設定といった高度な初期構築が必要であったものの、KAGOYA側のサポートによってその負荷は最小限に抑えられました。
課題 | 以前使用していたパブリッククラウドで障害が多発した状況 |
解決策 | プライベートクラウドパッケージの導入 |
効果 | 安定稼働、VPN構築を含めた初期構築の容易さ、コスト削減 |
>【導入事例1】 業務システム・サービス基盤に3Tier仮想化環境を簡単導入
株式会社エコー・システム様
株式会社エコー・システムは、業界特化型の業務アプリケーションやクラウドサービスを多数展開する中で、新たなSaaS型サービス「お弁当EDIシステム」の立ち上げに際し、そのインフラ基盤として「FLEXプライベートクラウドパッケージ(HA構成)」を採用しました。
選定の決め手となったのは、まずホストやハードウェアを占有できるベアメタル環境が提供されている点です。また、コストパフォーマンスも極めて高く、他社のクラウドサービスと比較した結果、KAGOYAが最もバランスに優れていたといいます。さらに、営業および技術支援の担当者の対応が迅速かつ親身であったことも、安心して導入を決断できた要因でした。
プライベートクラウドパッケージ導入後、株式会社エコー・システムは、想定していた以上の運用安定性と柔軟性を実感しています。「お弁当EDIシステム」は全国300事業所以上で稼働しており、数千人単位の利用にもかかわらず、クラウド環境に起因するトラブルはほとんど発生していません。
一方で、導入プロセスでは、ハードウェア選定や初期構築の設計、KVM(リモート管理)の準備といった技術的ハードルが存在しました。しかし、KAGOYA側の技術支援担当が迅速かつ柔軟に対応し、KVMの貸し出し依頼や設定調整といった作業もスピーディーにサポートされたことで、大きな障壁なく移行を完了。導入から短期間で本番運用へと移行できたことは、社内外双方において大きな信頼感をもたらす結果となりました。
課題 | 自社パッケージサービスの安定基盤が必要だった |
解決策 | プライベートクラウドパッケージの導入 |
効果 | 自由度の高い環境構築、親身なサポート、早期クラウド化の実現 |
>【導入事例2】自社パッケージサービスの基盤をノントラブルで早期クラウド化
まとめ
プライベートクラウドは、セキュリティと柔軟性を両立させた理想的なITインフラです。
IP-VPN、専用線、広域イーサネットなどの接続方法から、最適なものを選択することで、ビジネスニーズに合った環境構築が可能になります。
ネットワークセキュリティの確立は、データ保護の要となるため妥協できない要素です。KAGOYAのプライベートクラウドパッケージは、これらの要件を満たしながら、企業の成長に合わせた拡張性も提供しています。
実際の導入事例からも分かるように、業種や規模を問わず多くの企業がメリットを享受しています。自社に最適なプライベートクラウド環境を構築し、ビジネスの競争力を高めていきましょう。