
社内サーバーのクラウド化を検討されていますか?多くの企業が直面するサーバー運用の課題を解決する鍵がクラウド化にあります。
本記事では、クラウド化の基本概念から、コスト削減や業務効率化といった5つのメリット、さらに導入前に知っておくべき3つのデメリットまで徹底解説します。
IT担当者はもちろん、経営層の方々にも役立つ情報が満載です。自社に最適なクラウド戦略を立てるための判断材料として、ぜひ最後までお読みください。
目次
今さら聞けない「サーバーのクラウド化」とは
サーバーのクラウド化とは、従来社内に設置していたサーバー機器をインターネット経由で利用できるサービスに移行することです。物理的な機器を自社で保有・管理するオンプレミスサーバーでは、導入時の高額な初期投資や専門知識を持った人材による定期的なメンテナンスが必要でした。
一方、クラウドサーバーは「必要な時に、必要な分だけ」利用できる特徴があります。料金については従量課金制であることが多いですが、月額固定で利用できる国産のクラウドも登場しています。
| 比較項目 | クラウドサーバー | オンプレミスサーバー |
|---|---|---|
| サーバー設置場所 | クラウド事業者のデータセンター | 自社内のサーバー室など |
| 導入スピード | 非常に早い(数時間〜数日) | 時間がかかる(数週間〜数ヶ月) |
| コスト | 初期費用は低いが月額費用が発生 | 機器購入などの初期費用が高い |
| 管理・運用 | クラウド事業者に任せられる | 自社での専門知識と人員が必要 |
| 拡張性 | 簡単かつ迅速にリソース変更が可能 | 機器の追加購入などが必要で時間がかかる |
| カスタマイズ性 | 事業者の提供範囲内に限られる | ハードウェアから自由に構築可能 |
| 災害対策 | 有利(遠隔地の堅牢な施設で管理) | 自社でバックアップなどの対策が必要 |
クラウド化の背景には、コスト削減だけでなく、テレワークの普及による「いつでもどこからでも」アクセスできる環境整備の必要性があります。技術的には、仮想化技術によって1台の物理サーバー上に複数の仮想サーバーを構築し、リソースを効率的に分配しています。
社内サーバーをクラウド化する5つのメリット

社内サーバーをクラウド化することで企業が得られるメリットは多岐にわたります。
以下では特に重要な5つの利点について詳しく解説していきます。従来のオンプレミス環境では、サーバー機器の購入・設置・保守といった多くの負担がありましたが、クラウド化によってこれらの課題を大幅に軽減できます。
- 運用管理の負担と人件費の大幅削減
- 迅速にシステムを導入・拡張できる柔軟性
- リモートワークを促進するアクセス性の向上
- 高度なセキュリティ対策の活用
- 冗長化や多拠点化の設計により、災害時の事業継続(BCP)を実現
これらのメリットは、企業の競争力強化やコスト最適化、働き方改革の推進に資する重要な要素となります。
サーバー運用管理の負担と人件費の削減
クラウド化の最大の魅力は、サーバー運用管理の負担から解放されることです。オンプレミスでは、サーバー機器の購入・設置から始まり、定期的な保守点検、障害対応まで、すべてを自社で行う必要がありました。しかしクラウドでは、これらの物理的管理業務がすべて不要になります。
サービスモデルによって運用負担も異なり、PaaSやサーバーレス、マネージドDBなどでは基盤OSのアップデートやセキュリティパッチ適用はクラウド事業者が実施します。IaaSの仮想サーバでもハードウェア管理が不要になるため、運用負担は大幅に軽減されます。
また、クラウド基盤側の障害にはクラウド事業者の専門チームが対応し、SLAに基づいた復旧が図られます。これにより、情報システム部門の人員を削減できるだけでなく、既存スタッフをより戦略的なDX推進やビジネス貢献度の高い業務にシフトさせることが可能になります。
結果として、IT人材の有効活用と人件費の最適化を同時に実現できるのです。
ビジネスの変化に対応する迅速な導入と柔軟な拡張性
ビジネス環境の変化に素早く対応できることは、現代企業の競争力を左右します。クラウドサーバーなら、オンプレミスで数ヶ月から1年かかるサーバー構築が、わずか数時間で完了します。急な需要増加や新規プロジェクト開始時も、すぐにシステム環境を用意できるため、ビジネスチャンスを逃しません。
また、クラウドの最大の強みは「スケーラビリティ」です。繁忙期にはCPUやメモリを増強し、閑散期には縮小するといった柔軟な調整が、管理画面から数クリックで実現できます。この特性により、小規模な予算でスモールスタートし、事業の成長に合わせて段階的に拡張していくアプローチが可能になります。
初期投資を抑えながらも、将来の成長に備えた拡張性を確保できるため、スタートアップから大企業まで、あらゆる規模の企業にとって理想的なインフラ環境といえるでしょう。
リモートワークを促進するアクセス性の向上
クラウド化の最大の魅力の一つは、場所を選ばない柔軟なアクセス環境です。適切な認証・権限があれば、インターネット接続を通じてオフィス、自宅、カフェ、出張先などから必要なデータやシステムにアクセスできます。これにより、コロナ禍で急速に広まったリモートワークの導入障壁が大きく下がりました。
従来のオンプレミス環境ではVPNの構築や複雑なセキュリティ設定が必要でしたが、クラウドではVPNを前提としないゼロトラスト型のリモートアクセスを比較的容易に構築できます(ただしIAMやMFA、ネットワーク/端末のセキュリティ対策は引き続き必要です)。
また、複数の拠点や社員間でのリアルタイムなデータ共有も容易になり、離れた場所にいるチーム間でもスムーズな共同作業が可能です。働く場所や時間の制約から解放されることで、ワークライフバランスの向上や多様な人材の活用にもつながり、結果として企業の生産性と従業員満足度の両方を高める効果が期待できます。
専門事業者による高度なセキュリティ対策
クラウドサービス事業者のデータセンターは、一般企業では実現困難な最高レベルのセキュリティ体制を整えています。24時間365日の監視体制、生体認証による入退室管理、耐震・免震構造、冗長化された電源設備など、物理的なセキュリティ対策は徹底されています。
>セキュリティ対策、サポート体制に信頼ある国内データセンター
さらに、DDoS攻撃対策、不正アクセス検知、データの暗号化、定期的なセキュリティパッチの適用など、サイバー攻撃に対する防御も専門家チームによって継続的に更新・改善されています(IaaSではOSやアプリのパッチ適用は利用者の責任となるなど、共有責任モデルに基づきます)。自社でこれらと同等のセキュリティレベルを構築しようとすると、専門知識を持つIT人材の確保や高額な設備投資が必要となり、中小企業にとっては大きな負担となるでしょう。
クラウド化によって、こうした専門事業者のセキュリティノウハウと投資の恩恵を、主に月額・従量課金で享受できることは大きなメリットです。セキュリティ認証や監査報告(ISO/IEC 27001の認証やSOC 2(Type II)報告書など)を備える事業者を選ぶことで、より安心してデータを預けることができます。
災害時にも事業を守るBCP対策の実現
地震や台風といった自然災害が発生した場合、オフィスやサーバールームが被災すると、重要なデータが失われるリスクがあります。クラウド化によって、データを自社設備から切り離し、堅牢なデータセンターに保管できるため、自社設備が被災しても事業継続の可能性が高まります。
例えば、東日本大震災(2011年3月11日)では多くの企業がデータ喪失の危機に直面しましたが、適切にクラウドを活用していた企業の中には比較的迅速に業務を再開できた事例がありました。
多くのクラウドサービスはバックアップや災害復旧(DR)機能を提供しており、これらを適切に設定・運用することで、障害時のダウンタイムを最小化できます。さらに、複数のリージョンやアベイラビリティゾーンを活用した冗長化設計により、特定地域の大規模災害にも対応可能です。自社で同等のBCP対策を構築しようとすると、遠隔地にバックアップ環境を用意し、定期的なデータ同期や保守を行う必要があり、膨大なコストと専門知識が必要です。
クラウド化はこれらの負担を大幅に軽減しながら、高度なBCP対策を実現できる賢明な選択といえるでしょう。
導入後に後悔しないための3つのデメリット

クラウド化の導入は多くのメリットをもたらしますが、実際に移行を検討する際には潜在的なデメリットも理解しておく必要があります。
特に中小企業では、これらの課題を事前に把握していないと、導入後に「こんなはずではなかった」という後悔を招くことになります。ここでは主要な3つのデメリットを紹介します。
- 既存システムとの連携性の問題
- ネットワーク環境に依存するパフォーマンスの変動
- 長期的に見た場合のコスト増加の可能性
これらのデメリットは適切な計画と対策によって最小限に抑えることができます。以下のセクションでは、各デメリットの詳細と、それらを克服するための具体的な方法について解説していきます。
既存システムとの連携性やカスタマイズの制約
クラウド化の大きな課題となるのが、既存システムとの連携性です。
クラウド事業者が提供するOSや環境には制限があり、長年使用してきた自社独自のシステムとスムーズに連携できないケースが少なくありません。特に古いレガシーシステムとの互換性に問題が生じることがあります。また、オンプレミスと比べると、物理ハードウェアやネットワークの低レイヤー構成は自由に変更できず、結果として一部のカスタマイズ性が制約される場合があります。
クラウドサービスは標準化された環境で効率を高める仕組みのため、特殊な要件に対応できないことがあります。このため、クラウド移行を検討する際は、事前に既存システムの要件とクラウドサービスの仕様との互換性を徹底的に確認することが不可欠です。場合によっては、システム改修やAPI連携の開発が必要となり、想定外のコストや時間がかかることもあります。
通信環境に依存するパフォーマンスの変動
クラウドサーバーへのアクセスはネットワーク経由で行われるため、社内のネットワーク環境や回線速度がパフォーマンスに直接影響します。特に大容量データの送受信や複数ユーザーが同時アクセスする環境では、回線速度の不足がボトルネックとなりストレスを感じる場面も少なくありません。
また、通信障害が発生した場合、自社での原因究明や復旧作業は困難で、クラウド事業者の対応を待つしかないという無力感を味わうこともあるでしょう。こうした事態を避けるためには、導入前に社内ネットワークの見直しや増強を検討し、SLAで可用性を明確に定め、あわせてサポート契約で障害時の対応時間が規定されている信頼性の高い事業者を選定することが重要です。
特にリアルタイム性が求められる業務システムでは、バックアップ回線の確保も検討すべきでしょう。
長期利用でオンプレミスを上回る可能性のある費用
クラウドサーバーの最大の懸念点は、長期運用におけるコスト増加です。初期投資が少なく始められる一方で、月額料金が継続的に発生するため、3〜5年の長期利用ではオンプレミスの初期投資型モデルよりも総コストが高くなるケースが少なくありません。
特に注意すべきは、データ転送量に応じた従量課金制を採用しているサービスです。ビジネス拡大に伴いデータ処理量が増加すると、想定外の高額請求に驚くことになります。また、ストレージ容量の追加やバックアップオプションなど、当初の見積もりには含まれていなかったオプションサービスの追加も総コストを押し上げる要因となります。
こうしたコスト増加リスクに対処するには、KAGOYAのような月額定額制で転送量無制限のサービスを選択するか、定期的なコスト見直しと最適化を行うことが重要です。クラウド移行を検討する際は、5年程度の長期的な視点でTCO(総所有コスト)を比較検討することをお勧めします。
まとめ
サーバーのクラウド化は、コスト削減や運用負担の軽減、柔軟な拡張性など多くのメリットをビジネスにもたらします。
しかし、カスタマイズの制約や長期的なコスト増加の可能性といったデメリットも存在します。導入を検討する際は、自社の業務特性や将来計画を踏まえた判断が重要です。
オンプレミスかクラウドの二択ではなく、両方を組み合わせたハイブリッド構成も有効な選択肢となります。
専門家に相談し、自社に最適なIT環境を構築することで、デジタル時代の競争力を高めていきましょう。














