
Windows Server 2016の延長サポートの終了が間近に迫ってきている昨今、リプレース先をどうするかという課題に直面している担当者が頭を抱え始める時期がやってきました。
まだ猶予があるとはいえ、事前にある程度のリプレース先の目安は付けておく必要がありますので、この記事ではWindows Server 2016のリプレース先となりえる候補をいくつかご紹介します。

目次
Windows Server 2016のEOLについて
Windows Server 2016が延長サポートを終了(EOL)する件について、先に詳細を説明します。
Windows Server 2016とは
Windows Server 2016は、マイクロソフトが提供する企業向けサーバーOSで、クラウドとオンプレミス環境の両方に対応したハイブリッド設計が特徴です。
Windows Server 2016では、それまでの従来の安定したWindows Server基盤に加え、セキュリティ強化機能(Shielded VMなど)や軽量化された「Nano Server」による高効率な運用を実現できていました。さらに、コンテナ技術(Windows Containers/Hyper-V Containers)を標準サポートし、開発・運用の柔軟性を高めることができていました。
他にも、Active Directoryやリモートデスクトップサービスなど、企業ITの基盤となる機能を備えつつ、クラウド連携や仮想化にも強く、幅広い用途で利用されるサーバーOSとして今でも重宝されています。
Windows Server 2016のサポート終了(EOL)はいつ?
Windows Server 2016はもともと2022年1月11日にメインストリームサポート※が終了していました。
※メインストリームサポート:
Microsoftが製品に対して提供する最初の正式サポート。
機能追加や改良アップデートをはじめ、セキュリティ更新プログラムや不具合修正などのサポートを受けられる。
そこからセキュリティ更新のみ提供され、新機能追加や仕様変更対応は行われなくなる延長サポート期間に突入しました。
今回のサポート終了の件はこの延長サポートの終了を指しており、終了日は2027年1月12日です。
| Windows Server 2016 | サポート終了日 |
|---|---|
| メインストリームサポート (正式サポート) | 2022年1月11日 |
| 延長サポート (セキュリティ更新のみ) | 2027年1月12日 |
Windows Server 2016のリプレース先の選び方

Windows Server 2016のリプレース先の選び方については、現状や抱えている課題、どこに重点を置くのかなど、人によって判断基準が異なります。
なので、ここでは項目に分けて選び方について解説します。
現行環境の把握
まずは、現行環境の把握を行うことから始めます。
特に、稼働中アプリケーション・ミドルウェアの一覧だったり、ハードウェアの更新時期や保守期限、利用者数や負荷状況は明確にしておく必要があります。
ここを把握しておくことで、リプレースと同時に環境の改善やリスクの回避が可能になります。
オンプレ環境にするのかクラウド環境にするのか
いずれのWindows Serverのエディションにリプレースするにしても、オンプレ環境にするのかクラウド環境にするのかは検討が必要です。
特に、現時点でオンプレ運用しているが、Windows Server 2025へのリプレースにする場合はAI機能なども追加されることから、利用できる機能をフル活用するには高スペックなサーバーが求められるようになります。
他にも現行がオンプレ運用だが、管理の手間やコストなどの問題からクラウド移行を検討する方もいます。
ここに関しても、状況によって最適な選択肢は異なりますので、どの環境での運用が望ましいのか改めて検討する必要があります。
互換性の確認
Windows Server 2016では利用できていたアプリやミドルウェアがリプレースすることで利用できなくなるという可能性も大いにあります。
これはWindows Serverのエディションを変更したことによる影響の可能性もありますし、リプレースの際に環境の変更などを行っている場合は、そこが原因になっているケースも考えられます。
なので、事前に互換性の確認ができる場合は、できる限り検証を行っておくことが推奨されます。
幸い、KAGOYA FLEXのクラウドサーバーやベアメタルサーバーの様に、事前に無償トライアルでリプレース先として検討しているエディションを選択して検証することも可能なサービスもありますので、こういったサービスを利用するのも一つの手段となります。

コスト試算
リプレースを検討する場合、コストの試算は必須です。
主に検討すべきコストは以下のような項目があります。
- 初期費用(ハード更新・ライセンス)
- 維持費(保守・電力・冷却・クラウド課金)
- 運用負荷(アップデート管理・監視・障害対応)
- サポート期間(EOLまでの余裕年数)
もちろん、このコストはオンプレ運用するのかクラウド環境をレンタルするのかによっても変動します。
また、KAGOYAのクラウドサーバーのようにWindows Serverのライセンスもオプションで利用できたり、同じくKAGOYAのベアメタルサーバーのようにWindows Serverのライセンスを持ち込みできるサービスだったりと、状況やリプレース方法によっても大きく変動しますので、可能性がある選択肢毎にコストを試算しておくことが推奨されます。
既にある程度のリプレースの条件が決まっている場合は、Web見積もりでサーバー代やライセンス代などまとめて試算することも可能です。
将来性の見通し
今回追加されたWindows Server 2025エディションから、AI周りの機能が強化されましたので、今後のAIの業務活用を見通すのであればこのタイミングでWindows Server 2025へのリプレースを検討する価値はあります。
まだまだ業務へのAI活用は限定的な作業のみという状況ではありますが、将来的にAI活用が当たり前になる可能性があることを考えると、次のリプレースまでの期間の長さも考えると、このタイミングで2025エディションにリプレースするという考え方もあります。
反対に、延長サポート終了後にWindows Server自体の利用を停止する予定や、オンプレ運用からクラウド運用に切り替える予定がある、もしくはその可能性がある場合は安定性の高い2022エディションへのリプレースが望ましい可能性もあります。
Windows Server 2016のリプレース候補

Windows Server 2016の延長サポート終了に伴い、そのリプレース先も検討していく必要があります。
幸いなことに、リプレース先としてはいくつか選択肢が用意されていますので、自身もしくは自社に適したリプレース先を選択できます。
3つのリプレース先候補
現状、Windows Server 2016のリプレース先の候補としては、以下の3つがあります。
- Windows Server 2019
- Windows Server 2022
- Windows Server 2025
これまでの周期から見て、2~3年間隔で新しいエディションが追加されていますので、2027年にWindows Server 2027エディションが登場する可能性もあります。
しかし、今回の2016エディションの延長サポート終了が2027年1月12日であることを考えると、新しいエディションが間に合う可能性は極めて低いので、この3つのいずれかにリプレースするのが現実的でしょう。
リプレース候補の比較
これらのリプレース先ですが、当然ながらそれぞれに特徴がありますので、単に最新のエディションを選べばよいというものではありません。
以下が、それぞれのエディションの比較表となります。
| 比較項目 | Windows Server 2019 | Windows Server 2022 | Windows Server 2025 |
|---|---|---|---|
| リリース日 | 2018年10月 | 2021年8月 | 2024年11月 |
| メインサポート終了 | 2024年1月9日 | 2026年10月13日 | 2029年11月13日 |
| 延長サポート終了 | 2029年1月9日 | 2031年10月14日 | 2034年11月14日 |
| 管理ツール | Windows Admin Center(初期版) | 改良版Windows Admin Center、Azure Arc連携強化 | Windows Admin Center最新版、Copilot・AI連携対応 |
| セキュリティ機能 | 基本的な保護機能(Defender ATP) | Secured-core Server(ハードウェアレベル防御) | Zero Trust統合、次世代資格情報保護 (NTLM廃止予定) |
| 仮想化/コンテナ | Hyper-V/Windows Containers対応 | Kubernetes/Linuxコンテナとの統合強化 | コンテナの軽量化・GPU仮想化強化・AI推論ワークロード最適化 |
| クラウド連携 | Azure Backup/Site Recovery対応 | Azure Arc・ハイブリッド管理強化 | Azure Stack HCI統合・ハイブリッドAI運用最適化 |
| 主な特徴 | 安定・互換性重視。2016から移行しやすい | セキュリティ強化・クラウド連携重視 | 次世代AI・ゼロトラスト対応の最新基盤 |
| 推奨環境 | 既存業務システムの移行に最適 | セキュリティ重視の法人・官公庁向け | 新規導入・AI/ハイブリッド構成を見据える環境向け |
Windows Server 2019は今回延長サポートが終了するWindows Server 2016に一番近いエディションであることから、現行で利用しているアプリなどの互換性がある可能性が高く、安定運用が望めます。
しかし、Windows Server 2022はセキュリティ面で強化されているため、ゼロトラストやクラウド統合を進めたい場合には推奨されるエディションとなります。
そして最新のWindows Server 2025ではAI連携やハイブリッド運用が可能になりますので、今後10年以上利用を見据える場合には将来性の高い環境となっています。
環境の選択肢は幅広い
いずれのエディションの場合であっても、そのエディションをどのような環境で運用するかの選択肢は幅広いです。
自社で管理している物理サーバーに直接インストールする、物理サーバー上で仮想環境を構築してWindows Serverを複数運用するという方法があります。
他にも、自社でサーバーを管理せず、外部のクラウド環境やVPSなどをレンタルできるサービスを契約し、そこにWindows Serverをインストールする方法。
さらに細分化すると、外部のクラウド環境での運用だけでも複数存在することもあります。
実際にKAGOYAのサービスだけで見ても、以下のページでご紹介の通り4通りの方法があります。

そのため、リプレース先が一向に決まらないという事態に陥ってしまわないよう、事前にしっかりと要件をまとめておきましょう。
Windows Server 2016リプレースの注意点
ここまでの紹介でも何度か触れてきましたが、Windows Server 2016からリプレースする際には、単純なOSの入れ替えでは済まない注意点がいくつかあります。
特に、アプリケーションの互換性やセキュリティ仕様の変化、ハードウェア要件などは見落としやすく、移行後にトラブルとなるケースも少なくありません。
- アプリケーション互換性の確認が必須
- セキュリティ仕様の変化による影響
- ハードウェア互換性と要件の変化
- Active Directory移行時の注意点
- ライセンス体系の見直し
アプリケーション互換性の確認が必須
最も重要となるのが、既存アプリケーションやミドルウェアの互換性です。独自開発システムや古い.NET Framework、IIS設定、SQL Serverの旧バージョンなどは、新しいWindows Server 2022/2025では動作しない可能性があります。特に SMBv1 や古い暗号化方式を必要とする機器・アプリは注意が必要で、移行前に必ず検証環境で動作確認を行うことが重要です。
セキュリティ仕様の変化による影響
Windows Server 2022以降では、TLS1.0/1.1の無効化、SMBv1の廃止、NTLM認証の段階的縮小など、セキュリティ仕様が大幅に更新されています。
これにより、古い複合機やNASが接続できなくなるケースや、内部システムが認証エラーになる事例も報告されています。ネットワーク機器や周辺システムのバージョンも含めて、事前に仕様確認が必要です。
ハードウェア互換性と要件の変化
オンプレミスで動かしている場合、新OSが既存サーバーにインストールできるとは限りません。
Windows Server 2022/2025では、TPM 2.0、Secure Boot、UEFIブート対応など、より高いハードウェア要件があります。物理サーバーを更新しない場合は、現行ハードウェアが対応しているか必ず事前にチェックしておきましょう。
Active Directory移行時の注意点
ドメインコントローラーとして利用している場合は、Active Directoryの機能レベルやSYSVOL複製方式にも注意が必要です。
特に旧来の FRS(File Replication Service)のままでは新OSと共存できないため、DFSRへの移行作業が必要になる場合があります。
ライセンス体系の見直し
Windows Serverのライセンスはコアライセンス制のため、サーバーの物理コア数や仮想化台数によって必要数が変わります。
また、ユーザーやデバイスがアクセスする場合は別途CAL(Client Access License)も必要です。リプレース時は必ずサーバー構成とユーザー数を見直し、最適なエディションとライセンス数を確認しましょう。
>ライセンスも含めて無償トライアルができる国産クラウドサーバー
まとめ
以上が、Windows Server 2016のリプレースの候補や注意点のご紹介となります。
延長サポートの終了までまだ余裕がありますので、今のうちから準備を進めることが推奨されます。
とはいえ、後回しにするとギリギリになってトラブルに遭遇する可能性も考えられますので、事前にエディションの選定だけではなく、コストの試算やサーバー環境の選択、トライアルなどでの互換性の確認は事前に行うようにしましょう。









