LiteLLMとは？メリット・利用シーンから導入方法までわかりやすく解説

企業で生成AIの導入が進みつつあります。LLMの種類も増え、シーンごとの使い分けや併用も進んでいる状況です。

その一方で、LLMはそれぞれ使い方が少しずつ異なったり、別々の料金体系で費用が発生したりする点には注意が必要となります。LLMをスマートに使い分けたくても、これらの点がネックとなり、利用が進まない可能性があるのです。

LiteLLMを使えば、こういったLLM利用の悩みを解決することができます。これから複数のLLMを採用する際は、LiteLLMの導入も検討するとよいでしょう。

この記事ではLiteLLMとは何かといった基本から利用する主なメリット、利用シーン、導入方法などを解説します。この記事を読めば、LiteLLM導入の検討に必要な基本知識を把握できるでしょう。

LiteLLMとは？ | 100種以上のLLMを簡単に使いこなすためのツール

LiteLLMとはOpenAI互換のAPIを通じ、100種以上のLLMを同一インターフェースで簡単に使いこなすためのツールです。

OpenAIのGPTシリーズやGoogle Gemini、AnthropicのClaudeなどさまざまなLLMが登場しており、それぞれ特徴が異なります。開発者としてはそれらを適材適所で使い分けたいところですが、それぞれAPIの使い方が少しずつ異なる点が頭の痛いところです。

LiteLLMを使えば、まるでテレビのリモコンでチャンネルを切り替えるような手軽さで目的のLLMを使い分けられます。開発者はLiteLLMを導入することで、さまざまなLLMを統合できるのです。

LiteLLMとLLMの違い

	LLM	LiteLLM
概要	自然言語処理を行うAIモデル	各種LLMをひとつのインターフェイスで使い分けるツール
主な目的	テキストの生成、要約、翻訳、自動応答など	各種LLMを適材適所で切り替えて使い分けるためのインターフェース提供
利用方法	API経由・ローカル実行・クラウド提供など提供元により異なる	Pythonコードにて目的のLLMをAPI経由で呼び出す

LLM・LiteLLMはいずれも生成AIに関わる技術ですが、機能や目的が異なります。

LLM（Large Language Models、大規模言語モデル）は大量のテキストデータをディープラーニングにて学習し、自然言語の処理をおこなうAIモデルです。LLMを使うことで、AIによる文章の自動生成や要約、翻訳、質問応答などがおこなえます。OpenAIのGPTシリーズやGoogle Gemini、Meta社のLlama、AnthropicのClaude、オープンソースのDeepSeekなど聞いたことがある種類も多いのではないでしょうか。

一方でLiteLLMは、これら多くのLLMをひとつのインターフェイスで使い分けるためのツールです。LiteLLMを採用することにより、特徴の異なるLLMを簡単に切り替えて使えるようになります。

LiteLLMが開発された背景

LiteLLMが登場するまで、開発者や管理者はLLMをどう使い分けるかで頭を悩ませていました。

世の中にはたくさんの種類のLLMがあり、それぞれ特徴が異なります。適宜使い分けたいところですが、プロバイダーごとにAPIの操作方法が異なることから、コードや開発そのものが複雑になるのです。

またLLMごとに費用が発生するうえに、それぞれ料金体系が異なります。チームや部署ごとに別々のLLMを使っているような場合、どこでどのくらい費用がかかっているのか速やかに把握するのは簡単ではありません。

LLMを使い分ける際の、このような悩みを解決するために開発されたのがLiteLLMです。LiteLLMを使うことによって、複数のLLMを使う際の悩みを解決できます。

LiteLLMを使う主なメリット

LiteLLMを使うことで、LLMの使い分けがしやすくなることをみてきました。そのうえで、LLMの導入によってどのようなメリットを期待できるのでしょうか。以下ひとつずつみていきましょう。

開発にかかるコストと負担を軽減できる

プロバイダーごとにAPIの操作方法が異なるため、新しいLLMを採用するたびに使い方を学習しなくてはなりません。また複数のLLMを使うためには、複雑なコードを記述する必要が生じます。

その点、LiteLLMを使えばシンプルなコードでLLMを使い分けられるうえに、LLMごとに異なるAPIの操作を意識しなくてよくなるのです。その結果、複数のLLMを使って開発する際のコストや負担を軽減できます。また採用するLLMを切り替える際の開発コストを、最小限におさえられるのもメリットです。

複数のLLMを使い分ける際のコストを管理しやすくなる

LLMはそれぞれ費用がかかるうえに、料金体系も異なります。ひとつの組織で複数のLLMを使い分けている場合、どのLLMにどれだけコストがかかっているかを把握するのは簡単ではありません。

LiteLLMを使えば、LLMごとに発生している費用をリアルタイムで追跡し、ダッシュボード上で参照できるのです。またチームごとなどの予算を設定して、上限に近くなったときに通知するといった機能もあります。

そのためLiteLLMを採用すれば、複数LLMを使い分ける際のコスト管理が簡単になるわけです。

複数のLLMを使い分ける際の処理速度が向上する

従来は複数のLLMと連携する際に、複雑なコードを記述しなければなりませんでした。それぞれAPIの出力形式や認証方法などが異なるためです。

LiteLLMを使えば、複数のLLMと連携する際のコードが簡略化され全体量が減ります。その結果、処理速度も向上するわけです。

信頼性が向上する

LiteLLMには、利用中のLLMが一時的に利用できなくなったり利用制限に達したりした際に、別LLMへ切り替えるフォールバック管理の機能があります。そのためLiteLLMを使うことでトラブルによってLLMを使用不能となり、システムに支障が生じるリスクを軽減できるわけです。

LiteLLMの利用シーン

LiteLLMを利用することによって、簡単に複数のLLMを使い分けられるようになることをみてきました。こういったLiteLLMの機能を活用することで、以下のような活用例・利用シーンが考えられます。

項目	概要
チャットボット /音声アシスタント	回答の作成や音声の正確な判定などに、複数のAIを利用。 LiteLLMにてその切り替えをスムーズに行えるようにするとともに、処理速度の向上も実現する。
社内のLLM利用管理	ユーザー単位で、どのLLMをどのくらい使っているかをモニタリング。 利用料が多いユーザーは定額プランへ促すなどして、コストを最適化する。 またLiteLLMによって、ユーザーのLLM利用を追跡し、監査することも可能。
マルチLLMアプリケーション	文章生成・コード生成など、タスクの種類ごとに適したLLMを使い分ける
マルチクラウド LLMオーケストレーション	複数のクラウドサービスにて、別々のLLMを併用する際に活用する。 たとえば複数のLLMに対して同時に回答を作成させ、処理が早い方や優先順位の高い方の回答を採用する。 処理の負荷を分散させたり、障害時には別のLLMへ切り替えたりするといった利用も可能。

LiteLLMの導入方法

LiteLLMを導入するにはPython環境（3.8以上を推奨）が必要です。

環境さえ整えば、導入のための作業は難しくありません。以下の操作で簡単に導入できます。

1. Python環境を準備する
2. LiteLLMをインストールする
3. 利用するLLMプロバイダーからAPIキーを取得する
4. 設定ファイルを作成する
5. 利用を開始する

そもそもPython環境の準備が難しかったり、一旦試験的に触りたいだけだという場合は、Python環境の構築場所として日額20円～利用できるKAGOYA CLOUD VPSを使うという手段もあります。

なお、Pythonの構築方法について詳しくないという場合には、Dockerを使った構築方法なども当メディアでご紹介しておりますので、参考になればと思います。

LiteLLM導入にかかるコスト

LiteLLMは無料で使えるオープンソース版のほか、より高度な機能とサポートを求める企業向けのエンタープライズ版があります。

エンタープライズ版にはSLAなどが含まれ、料金については個別の問い合わせが必要です。

※SLA：Service Level Agreement（サービスレベルアグリーメント） の略で、サービス提供者と利用者の間で取り交わされるサービス品質に関する合意書

	オープンソース版	エンタープライズ版
コスト	無料	個別問い合わせ
サポート	コミュニティベースのサポート	専用の技術サポートを利用可能
セキュリティ機能	基本的なログのみ	監査ログやアクセス制御など
コスト管理機能	簡易的なコスト可視化機能のみ	カスタムタグによるコスト追跡やレポート機能
拡張性	拡張自体は可能だが手動での設定が必要	SSO・SAMLなどとの統合が可能
保証	なし	SLAによる稼働率保証

まとめ

LiteLLMは、100種以上のLLMを同一インターフェース上で使いこなすためのツールです。LiteLLMを使うことによって、あたかもリモコンで切り替えるように、複数のLLMを簡単に使い分けられます。

LiteLLMの主なメリットは、LLM併用時の操作が簡単になるうえ、処理速度やセキュリティが向上することです。LLM併用時の複雑なコマンド操作も、LiteLLMの利用によって解消されます。

LiteLLMオープンソース版は、Python環境さえあればすぐに利用可能です。一方で機能が拡張されSLAによる保証もつけられるエンタープライズ版は個別での料金見積もりとなります。