
メール業務に、生成AIを活用しているという声を聞く機会が増えています。実際、メール業務で生成AIを活用し、成果を出している企業は少なくありません。
生成AIは年々その品質が向上し続けています。自社ビジネスに生成AIを活用していない場合、業務効率化の大きなチャンスを逃し続けている可能性があるのです。
この記事では、メール業務において生成AIは現状どのくらい活用されているか、利用するメリット、利用の流れまで解説します。本記事を読むことで、自社におけるメール業務で、生成AIをどのように活用できそうかイメージできるようになるでしょう。
目次
メール業務での生成AI活用が進んでいる

生成AIは、ビジネスシーンにおいて欠かせないメール業務でも活用が進んでいます。Benchmark Japan社の調査(※)によれば、Outlook・Gmailユーザーのうち各メーラー付属の生成AI機能を使ったことがある割合は36.7%とのことです。
| よく使っている | 11.7% |
| たまに使っている | 25.9% |
| 一度も使ったことがない | 55.0% |
| 知らない・使っているかわからない | 7.3% |
※参照元:Benchmark Japan「メールサービス(Gmail・Outlook)の生成AI機能利用状況調査 2025年度版」
過半数はまだ使ったことがないと答えていることから、メール業務において生成AIの利用が浸透しきっているとはいえません。ただOutlook・Gmailユーザーの3人に1人以上は生成AI機能を使ったことがあり、利用が広がりつつあるのはわかるでしょう。
またOutlook・Gmail付属の生成AI機能を利用しているユーザーの過半数は、以下の通り「メール業務の効率が上がった」と回答しています。こういった点からも、メール業務での生成AI利用は進むと想定されるのです。
| メール確認の効率が上がった | 53.9% |
| メール返信の効率が上がった | 46.8% |
| 1日あたりに確認できるメールの件数が増えた | 27.3% |
| メールから取得する情報量が増えた | 18.2% |
| メール経由でのサイト訪問や購入をする機会が増えた | 9.7% |
| その他 | 0% |
| 特にメリットは実感していない | 11.0% |
※参照元:Benchmark Japan「メールサービス(Gmail・Outlook)の生成AI機能利用状況調査 2025年度版」
※Outlook・Gmailの生成AI機能を使ったことがあるユーザーに聞いています。
※「特にメリットは実感していない」と答えたユーザーは11.0%にとどまる
Microsoft社の公式サイト記事では、Microsoft AIを使った以下のような成功事例を紹介しており興味深いです。
Colbun社は、Microsoft 365 Copilotの導入により経営陣がメールの理解に費やす時間を1日あたり30分削減できた。
HELLENiQ ENERGYは、Microsoft 365 Copilotの導入により電子メールの処理時間を64%短縮できた。
Telstra社は21,000人の従業員向けにMicrosoft 365Copilotを導入。従業員はコンテンツ作成、会議要約、メールやチャットスレッドの要約にMicrosoft 365Copilotを活用。従業員からは週1~2時間の時間短縮効果が報告され、90%がMicrosoft 365 Copilotが業務体験を向上させたと回答。
メール業務に生成AIを活用するメリット

メール業務に生成AIを活用するメリットは多いです。以下、主要なメリットをひとつずつみていきましょう。
メール業務にかかる時間を大幅に節約できる
生成AIを活用することで、メール業務を効率化し作業時間を大幅に節約できます。
たとえばビジネスメールを作成する際、誰にどのようなメールを送るかなどの情報をもとに、構成や文章をいちいち検討しなくてはなりません。その点、生成AIを使えば簡単な指示をするだけで、一定の品質を備えたメールを瞬時に作成してくれます。
あとはその内容を確認し、必要に応じて修正すればメール作成が完了するのです。いちから自分でメールを作成し、読み返して修正する手間を考えれば、メール作成だけでも生成AIを活用するメリットを実感できるでしょう。
生成AIの品質は年々向上しており、修正の必要がほぼないビジネスメールを生成AIが作成するケースも少なくありません。
メールの品質が向上する
生成AIを適切に活用することで、メールの品質を向上させることも可能です。
生成AIを使えば誤字脱字や不自然な日本語表現、不適切な表現を回避できます。こういったミスを防げるだけでも、メールの品質が向上することは言うまでもありません。
またメールの作成にAIを使うことで、メールのトーンやスタイルの揺れも防げます。社内でメールのトーン・スタイルを統一させることも可能です。
シーンや宛先にあわせたメールのパーソナライズがしやすくなる
ビジネスにおけるメール業務では、シーンや宛先にあわせメールの内容をパーソナライズすることも重要です。たとえば営業のメールでは、「この顧客には価格面の説明を重視すべき」「技術面の説明を丁寧にした方がよい」などの事情があるでしょう。
生成AIにこういった事情を適切に指示することで、シーンや宛先にあわせたパーソナライズを考慮したメールを作成してくれるのです。
※2024年9月NTTデータ社は住友生命と共同で、生成AIを活用した見込み顧客向けパーソナライズド・レコメンドの実証実験を実施しています。
参照元:NTT DATA「生成AIを活用した見込み顧客向けパーソナライズド・レコメンドの実証実験を実施」
本実験では、生成AIが見込み顧客向けにパーソナライズした商品加入案内メールを作成し、その効果を検証しました。その結果、営業職員が作成したものに比べても、違和感のないメールを作成・送付できることがわかったとのことです。
さまざまな言語でのメール作成も可能になる
生成AIはさまざまな言語でのメール作成にも対応しています。たとえば、まず生成AIに通常どおりメールを生成させ人間が修正したあと、それを指定の言語に翻訳させることも可能です。
ユーザーが辞書アプリなどを駆使して外国語のメールを作るのに比べ、作業時間も大幅に短縮できるでしょう。
メール業務におけるストレスの軽減
ビジネスメールを作成する際は、文章や言い回しのひとつひとつが「適切か」「これで必要なことを伝えられるか」と不安になるものです。大事な取引先へのメールや重要な契約に関するメールであれば、そのストレスはさらに大きくなります。
その点、生成AIを活用すればゼロからメールを作成するのでなく、AIが作成した下書きを客観的な視点で修正すればよくなるのです。これによってユーザーにかかる負担が減ってストレスが軽減されます。
生成AIをメール業務に活用する際の注意点

生成AIはメール業務を完全に自動化してくれる技術ではありません。ユーザーはその特徴を把握し、気を付けて使う必要があります。ここでは、生成AIをメール業務で活用する際の注意点をみていきましょう。
生成AIが作成したメールは確認が必要
生成AIは瞬時にビジネスメールを作成できますが、その内容は必ずしも全て正しいわけではありません。
生成AIはさまざまなデータを学習し、その内容にもとづいてメールを作成します。そのデータの方に不備や誤りがあれば、生成AIがそのデータを参照し作成したメールにも不備・誤りが生じる可能性があるのです。
生成AIにメールを作成させた場合は、内容に修正すべき点がないか人の目で必ず確認する必要があります。
生成AIに個人情報や機密情報の入力はしない
原則として生成AIに個人情報や機密情報を入力してはいけません。生成AIは入力されたデータを学習し、別の作業をする際に利用する可能性があります。
インターネット上で公開されている生成AIは、自社だけが使っているわけでないことは言うまでもありません。仮に生成AIに個人情報・機密情報を入力すれば、その情報が外部のサーバーに保存され漏えいしてしまう可能性があるのです。
なお自社サーバー内などで動作する「ローカルLLM」であれば、こういった不安はほぼありません。ローカルLLMに保存されたデータにアクセスできるのは、自社のみだからです。
ビジネスメールの作成に生成AIを活用するための流れ
どうすればビジネスメールの作成に、生成AIを活用できるのでしょうか。ここではおおまかな流れをみていきましょう。
1.生成AIツールの選定と導入
最初にビジネスメールの作成に使う生成AIを選びます。生成AIによって強みが異なるので、特徴や口コミなどを参考に選ぶとよいでしょう。
なお昨今では、メールソフトに生成AI機能が付属しているケースも少なくありません。それらは、搭載先のメールソフトで使いやすいように設計されているので、まずはその機能から使ってみるのもよいでしょう。
2.生成AIにプロンプト(命令文)を入力
生成AIにメール作成を指示するには、プロンプト(命令文)を入力します。プロンプトといっても難しいものでなく、要は指示です。
たとえば「このメール(取引先からのメール)に対するお礼メールを書いて」といった簡単な指示も、プロンプトといえます。そのうえで「フォーマルに」や「わかりやすく」などの指示を加えるわけです。
※プロンプトの例は後述します。
3.必要に応じてプロンプト入力を繰り返す
生成AIが作成したメールが期待したものとかけ離れている場合は、追加でプロンプトを入力し改善をはかります。たとえば「もっと簡潔にまとめて」や「文章が硬いので親しみやすく」などです。このようにプロンプトの入力を繰り返すことによって、生成AIが作成するメールが改善されていきます。
4.人間による文章の校正・調整
生成AIが作成したメールをそのまま使うのでなく、最後は人間による文章の校正や調整が必要です。
生成AIが作成する文章には、間違いが含まれている可能性があります。また細かいニュアンスは、プロンプト入力を繰り返しても十分に改善されないことも多いのです。
そのため人間の目で誤りがないか確認したり、ニュアンスを微調整したりする必要があります。
ここまですれば、生成AIを活用したビジネスメールの完成です。
生成AIでのメール作成に利用可能なプロンプトの例

プログラミングなどに携わったことがない方は「プロンプト」と聞くと、「難しいのかな」と感じ尻込みするかもしれません。しかし生成AIへの指示で使うプロンプトは、直感的に作ることができます。
「人にものを頼むような感覚で、生成AIに指示を出せばよい」といえばイメージしやすいでしょうか。そのうえで生成AIに対するプロンプトを作る場合は、以下のようなコツがあります。
- 目的や条件を具体的かつ明確に指示する
- 送信者(自分)と送信先(相手)の立場を説明する
- 構造化する(きれいにまとめる)
以下、具体的なプロンプトの例をみていきましょう。
【例1】
・プロンプト例
以下の条件で、取引先への謝罪メールを作成してください。
#伝える内容
・商品の納入が遅れることへの謝罪
・原因は工場内の機械故障
・現在は復旧し、商品の生産を再開している
#送信者の情報
・営業担当
#相手の情報
・仕入れ部門の部長
#トーン
・謝罪の気持ちが伝わるように誠実に
・AIが作成した結果
件名:商品の納入遅延に関するお詫び
〇〇株式会社
仕入れ部 部長 〇〇様
平素より大変お世話になっております。
△△株式会社 営業担当の□□でございます。
このたびは、弊社商品の納入が予定より遅れることとなり、
〇〇様ならびに貴社に多大なご迷惑をおかけしましたこと、心よりお詫び申し上げます。
遅延の原因は、弊社工場内における機械の故障によるものでございます。
現在は復旧作業を完了し、生産を再開しております。
納入予定日は〇月〇日を見込んでおりますが、詳細は改めてご連絡申し上げます。
今後このような事態が再発しないよう、設備の点検体制を強化し、
安定した供給に努めてまいります。
改めまして、この度の不手際を深くお詫び申し上げます。
何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。
――――――――――――――――
△△株式会社
営業部 □□
TEL:XXX-XXXX-XXXX
Email:XXXX@XXXX.co.jp
――――――――――――――――
【例2】
・プロンプト例
以下の条件で、取引先への案内メールを作成してください。
#伝える内容
・既存顧客に、新しくリリースしたWeb制作サービスの提案
・別件で訪問したときに自社サイトをリニューアルする旨を聞いていた
・リリースするWeb制作サービスの強み
・SEOを意識した集客力に強み
・公開後のサポートも万全
・サービス紹介のため改めて訪問させていただきたい
・訪問可能な日時があれば提示いただきたい
#送信者の情報
・営業担当
#相手の情報
・代表取締役社長
#トーン
・専門的な用語はできる限り使わない
・誇張や過度のアピールは禁止
・自然で親しみやすいトーンで
#文字数
・300文字程度
・AIが作成した結果
件名:Web制作サービスのご提案について
〇〇株式会社
代表取締役社長 〇〇様
平素よりお世話になっております。営業担当の△△です。
先日、御社サイトのリニューアルをご検討中と伺いました。
弊社では、SEOを意識した集客力に強みを持つWeb制作サービスを新たにリリースいたしました。
公開後のサポートも充実しており、安心してご利用いただけます。
ぜひ詳細をご説明させていただきたく、改めてご訪問の機会をいただければ幸いです。
ご都合のよい日時をお知らせいただけますでしょうか。
何卒よろしくお願いいたします。
営業担当 ●●
ご覧のように、プロンプトはプログラミングの知識がなくても書けるシンプルなものです。人間の部下に指示を与えるような感じで構いません。
あとは紹介した例のように構造化してまとめれば、使いまわしや修正もしやすいでしょう。
ビジネスメール対応においてメール作成以外に生成AIができること
ビジネスメールの対応について、生成AIができることはメール作成だけではありません。以下のような作業も生成AIに任せることで、メール対応の効率を大幅に向上できます。
| 項目 | 概要 |
|---|---|
| メールの要約 | 長文メールの要点をまとめる |
| 添付文書のサポート | 添付するファイルの説明文や関連資料の要約を作成 |
| 翻訳・多言語対応 | 日本語から英語、英語から日本語のようにメールの内容を翻訳できるうえ、 文化に配慮した表現の提案も可能 |
| 分析・改善 | 作成済のメールを分析・評価し、改善点を提案する (誤字脱字や不適切な表現の指摘も可能) |
| 箇条書き化 | 複雑な内容を箇条書き化して簡潔にまとめる |
ビジネスメール作成に無料で使えるAIツールの例
以下、ビジネスメール作成に無料で使えるAIツールの例を紹介します。はじめての場合は、まずはいくつか試用してみて、自分にあったツールをみつけるとよいでしょう。
【ビジネスメール作成に使えるAIツールの例】
| 名称 | 概要 |
|---|---|
| ChatGPT | 世界中で広く知られている対話型AI。 あらゆる用途・幅広い形式のメール作成が可能。 |
| Gemini | Google社が開発した対話型AI。 Google検索によって最新の情報を参照できるので、時事性の高い内容にも対応しやすい。 |
| Copilot | Microsoft社が開発したAIアシスタント。 Microsoftの各種製品とシームレスな連携が可能。 |
| Claude | Anthropic社が開発した対話型AI。 自然で読みやすい文章の作成に定評がある。長文の読解や要約も得意。 |
| Copy.ai | 生成AIを利用した文章作成ツール。 テンプレートが豊富で特にマーケティング用の文章作成に強みがある。 |
| promptia | 生成AIへの指示を入力する欄があらかじめ用意されていて、プロンプト作成が不要な文章作成用の生成AIツール。 生成AIで手軽にビジネスメールを作成したいときには簡単で便利。 |
生成AIの利用で気を付けなくてはならないセキュリティリスクと対処法

生成AIをビジネスで利用する際は、いくつか気を付けなくてはならないセキュリティリスクがあります。以下、主なリスクとその対処法をみていきましょう。
機密情報・個人情報の漏えい
生成AIに入力する情報は学習され、回答を作成する際に利用される可能性があることは覚えておかなくてはなりません。自社の機密情報・個人情報を生成AIに入力することで、外部に漏えいしてしまう可能性があるのです。
また生成AIに入力した情報が、運営元が取得・保存しているログに残っていると考えられる点も注意しなくてはなりません。そういったログ情報は簡単に外部へ流出することはないと想定されますが、内部の不正行為や外部からの攻撃で漏えいする可能性はあります。しかしながら他社が管理するサーバーなので、自社でどうすることもできません。
情報漏えいを防ぐには、そもそも生成AIに機密情報・個人情報を入力しないことです。また入力したデータを学習にしない生成AIを選んだり、ローカルLLMを利用したりする方法も考えられます。
誤情報(ハルシネーション)の利用
生成AIのハルシネーション(幻覚・妄想)とは、生成AIが事実にもとづかない誤情報を作り上げてしまうことです。
生成AIはさまざまな情報にもとづき回答を作成するものの、その情報が全て正しいわけではありません。そもそも生成AIが参照元とした、インターネット上の情報自体が誤っていることもあるのです。
ビジネスメールに活用する際も、生成AIが作成した回答は人間の目により真偽をチェックしなくてはなりません。
著作権の侵害
生成AIが作成した文章や画像などは、他者の著作権や商標権などを侵害している可能性があります。仮にそのサービスが商用利用を許可していても、著作権侵害などのリスクがないわけではありません。生成AIが作り出すものが、完全にオリジナルというわけではないのです。
インターネット上の情報を参考にして、何がしかのコンテンツを作成する際は著作権に対する注意や検討をするでしょう。参照先が著作権などを侵害している可能性があるためです。
生成AIを利用する際も同様に、著作権について意識しておく必要があります。
まとめ
ビジネスの現場において、生成AIを活用する企業・シーンが増えています。生成AIを使うことで、ビジネスメールに関する業務を大幅に効率化した企業も多いです。
ビジネスメールに生成AIを活用すれば、メールの下書きを作成したり、長文のメールを要約したりできます。生成AIを適切に使うことにより、ビジネスメールの業務にかかる負担を軽減できるでしょう。
生成AIへ指示する際は、プログラミング言語のような難しい知識は必要ありません。人に指示を出すような命令文(プロンプト)を入力すれば、期待したとおりに生成AIが回答を返してくれるわけです。
無料で使える生成AIも多いので、気になったらまずは試用してみることをおすすめします。いくつか試しに使ってみることで、自社にあった活用方法がみつかるでしょう。













